「月の裏側」への第一歩を踏み出した中国 専門家が語るその意義

Cai Yang / Xinhua via AP

 専門家によると、今年の後半に月の裏側に無人探査機を軟着陸させるという中国の野望は様々な困難に直面している。しかし、この計画が成功すれば、月面探査で最も重要な最先端分野の1つである月の裏半球の詳しい調査へ向け、中国の宇宙開発計画に大きな弾みがつくだろう、とのことだ。

 世界で初めて月の裏側への着陸に成功する国家となることは中国の悲願だ。中国は、5月22日、地球上の制御拠点と今後、月の裏側に軟着陸させる予定の「嫦娥4号」との間の通信を可能にする通信中継衛星の打ち上げに成功した。

 月の裏半球は、月の自転と公転周期がほぼ同期していることから常に地球に背を向けているため、ダークサイドとしても知られており、月の表半球に比べるといまだに良くわからないことも多い。

 ジョージ・ワシントン大学宇宙政策研究所所長のジョン・ログスドン博士は、電子メールで、月の裏半球を探索する方法の実現に布石を打ったことは人々の記憶に残る成果だ、と述べた。

 さらに、ログストン博士は、「世界中で宇宙開発に力を入れる国々は総力を挙げて月の探査に焦点を当てており、もし中国が月の裏半球の探査に成功すれば、将来的に月の裏半球の開発利用を推進する主導的な立場に立つことになる」と語った。

 しかし、同博士は、中継衛星を適切な軌道に乗せることは難度が高く、来るべき月の裏側への軟着陸を成功させる第一歩に過ぎない、とも語る。

 博士は、「特に、地球から遠く離れた宇宙空間での作業には様々な困難がついて回るため、今回の通信衛星を打ち上げただけでは、決して嫦娥4号計画の成功が保証されたわけではない」と話した。

 中国のこの計画を共同推進している欧州宇宙機関の国際月探査ワーキンググループ長、ベルナルド・フーイング氏は、月の裏側への軟着陸は「全世界に名を遺す歴史的な偉業」となるだろう、と語る。

 フーイング氏は、この計画は、これまで何度も探査機が着陸した月の表半球とは組成が異なる裏半球についての「詳しい研究を可能にする科学的に貴重な機会」を提供することにつながる、と話した。

 しかし、フーイング氏は、「中継衛星を使ってデータのやり取りや探査車の制御を行うことは、とても大きな挑戦になるだろう」と言い、行く手に待ち受ける困難についての注意喚起も怠らない。

 月の裏半球はごつごつした岩石に覆われており、地球から直接電波を送り届けることができない。そのため、このような中継衛星を使って月の裏半球にいる探査機と通信を行うことが不可欠だ。

 中国は以前、「玉兎」という探査車を月面に着陸させたが、2019年には「嫦娥5号」という月面探査車を着陸させ、土壌など試料を採取するとともに探査車を地球へ帰還させる予定だ。これは1976年にこの計画が始まって以来、初めての実施となる。

 2003年、中国は初めて有人宇宙飛行計画を実施し、ロシアとアメリカに次いで宇宙飛行士を宇宙に送ることに成功した第3の国となり、また、1組の宇宙ステーションを軌道に乗せることにも成功した。

 今後の計画には、静止衛星である天宮2号用に重量20トンのコア・モジュールの打ち上げが含まれるとともに、2022年に稼働を開始する重量60トン超の宇宙ステーション専用コンポーネントの打ち上げも含まれ、2020年代半ばには火星へ探査車を送る計画もある。

 さらに、有人宇宙飛行計画を推進している総設計士の周建平氏は、先月行われた会議の席上、中国は既に月面へ宇宙飛行士を立たせるための「技術的基盤」を獲得している、と発表した。

 周氏は、「我々は、有人月面探査について多くの専門家たちと深く掘り下げた議論を重ねており、近年、実際に利用可能となった主要な技術に関する様々な研究を実施している」と話した。

 ログスドン博士は、「中国では、宇宙開発計画の大部分は軍の主導で進められているが、嫦娥4号の任務は、同国の国家安全保障の機能構築とともに、野心的な民間による科学的宇宙開発がどのように推進されているかについても明確に示している」と語った。

 スペースXやブルーオリジンなどの宇宙航空企業ほどの規模ではないにせよ、それらアメリカの民間企業を手本として、近年、中国では、多数の商用衛星打ち上げを手がける企業が次々と名乗りを上げている。

 先週、北京を拠点とする「零壱空間」(ワンスペース・テクノロジー)は、比較的小型(長さ9メートル/30フィート)のロケット、OS-Xの試験飛行打ち上げを行った後、再び地上へ落下させることに成功した。こうして同社は、宇宙ロケットの開発と打ち上げを行った初の民間宇宙飛行企業となった。

By CHRISTOPHER BODEEN, Associated Press
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Text by AP