臓器の保存に新技術、冷却ではなく加熱 移植向上の可能性

OrganOx via AP

 提供臓器を低温で保存して移植を待つ患者の元へ急行するのが外科医の常だが、時代はより暖かいアプローチを求めているようだ。イギリスの研究グループは4月18日、少なくとも肝臓は、低温ではなく体温で保存すると移植成績が向上する可能性があると発表した。

 血液と栄養分をたっぷり注入する機械で保存された肝臓は、移植されるまで機能し続ける。臓器にとっての生命維持装置であるこの機械は、肺や心臓移植用にも開発が進められている。

 この方法は値が張るため、臓器移植コミュニティは手ごろなクーラーボックスをすぐには手放せない。しかし、人体と同様の方法で臓器を維持すれば、貴重な提供臓器の使用可能時間が延び、現在廃棄されている臓器も使用可能になるため、将来的に移植件数が増加するだろうと支持者は期待を寄せている。

                                                                                                                 

「肝移植の最大の課題は、深刻な臓器不足にあります」と、イギリスとヨーロッパでこの研究を主導したオックスフォード大学のデイヴィッド・ナスララ博士は話す。「機械で保存された肝臓は移植される可能性が高いことが分かりました」

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 アメリカだけでも臓器移植を待つ患者がおよそ11万5千人いるが、昨年移植手術を受けられたのは3万4770人だけだった。何千人もの患者が移植の順番が来る前に亡くなっている。臓器提供数が少ないうえに、心臓や肺で約4~6時間、肝臓で約12時間と、提供臓器は長時間保存できないという課題が背景にある。そして、ドナーの年齢や健康状態によりうまく扱えない恐れのある臓器を外科医が廃棄する場合もある。

 しかし、移植患者の大多数は生存している。この事実は、提供臓器を冷却保存溶液の入ったクーラーボックスに放り込み手術室へ急行するという明らかに旧式の方法がうまく機能していることを意味する。凍結せず、低温下に置くことで臓器を実質的な休止状態にして、細胞活動を遅らせる。つまり、劣化を遅らせるのだ。

 今回の研究のハイライトは、「臓器保存を根本から変える初の取り組み」だと、アメリカの臓器移植システムを統括する全米臓器配分ネットワーク(United Network for Organ Sharing: UNOS)のデイヴィッド・クラッセン博士は話す。

 クラッセン博士はいわゆる「常温」保存に関する研究に参加していないが、「非常に刺激的なテクノロジー」だと評価したうえで、すべてではないが限定された臓器提供に適していることが判明するのではないかとしている。

 今回の研究は、イギリス、ベルギー、ドイツ、スペインで行われた肝移植220件を対象としている。研究に参加した病院は、新たに提供された肝臓を、従来のようにクーラーボックスの中で保存するものと、暖気によって臓器の機能を保つイギリスのオルガノックス社(OrganOx Ltd.)製の機械の中で最大24時間保存するものとに無作為に割り当てた。

 結果、患者の生存率に潜在的な差異は認められなかったが、移植時の健康状態は常温保存された肝臓の方がよかったとの報告がネイチャー誌に掲載された。また、クーラーボックスで保存された肝臓よりも保存中の細胞損傷が少なく、移植障害のリスクが低かった。

 さらに、外科医は常温保存の肝臓を数時間長く保存したが廃棄率は低く、最終的に低温保存の肝臓より20パーセント多く移植されたことが研究で明らかになった。

 その理由について、肝臓がどのように機能するかドナーの状態に基づいて推測する代わりに、保温機械の中で肝臓がどのように機能しているのか測定するために時間を回せたためだとナスララ博士は説明する。本研究は欧州委員会(European Commission: EC)の助成金を受けた。

 研究結果は有望だが、臓器保存に大金を投じて大きな変化をもたらすことに価値があると示す根拠は他にもあるのか、価値があるとすればいつ使うのがベストなのか外科医は注目していると、アラバマ大学バーミングハム校臓器移植学部部長のデヴィン・エックホフ博士は話す。

 オルガノックス社の機械は海外では認可されているが、アメリカでは治験中で、エックホフ博士の施設を含む14カ所の臓器移植センターで同様の研究が行われている。マサチューセッツ州に本社を置く、ライバル会社であるトランスメディクス社(TransMedics Inc.)は先ごろ、提供肺の常温保存に関するアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)の認可を受けた。

「クーラーボックスよりはるかに値が張るのは明らかです」と、オルガノックス社の機械を共同開発したオックスフォード大学のピーター・フレンド教授は認める。

 正確なコストは明かせなかったフレンド教授だが、医師が廃棄していた臓器を守り、真夜中の移植手術を朝に延期するようになれば、ハイテク臓器保存の先行投資に払う大金の元が取れることを示すためには、さらに研究が必要だと話す。

 UNOSのクラッセン博士は、薬剤やほかの療法と併用して移植前に臓器の健康状態を向上させ、臓器を「再生する」ために科学者がこの機械を使うことができるかがより重要な課題だと話している。

By LAURAN NEERGAARD, AP Medical Writer
Translated by Naoko Nozawa

Text by AP

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