アップルのiCloud、実はGoogle Cloudを使っていた セキュリティなどの問題は?

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 アップルが提供するiPhoneユーザの個人データをクラウド・サーバ上に保存するサービス「iCloud」のデータ保存先が、グーグルのクラウド・サービス「Google Cloud」であったことが判明した。スマホ・ビジネスにおける積年のライバルが技術提携していたことに関しては、各メディアがその真意をさぐっている。

◆開発者向け資料から発覚
 このニュースをいち早く報じたのはCNBCであった。その記事によると、この事実が判明したきっかけは、アップルがスマホアプリ開発者に提供しているセキュリティに関する資料にあった。その資料にはiCloudに関する記述があるのだが、同サービスのデータ保存先として他社のクラウド・サービスであるアマゾン・ウェブ・サービスとマイクロソフト・アジュールと数年前から明記されていた。ところが、2018年1月に更新された最新バージョンではマイクロソフトのサービス名がなくなり、代わりに「Google Cloud」という単語が書かれていたのだ。

 なお、同資料にはアップルがいつからGoogle Cloudを使い始めたかについては明記されていなかった。以上の件に関して、同資料で言及されなくなったマイクロソフトはコメントを差し控えており、アップルもまたコメントを拒否している。

◆セキュリティは問題なし
 テック系ニュースサイト『アルス・テクニカ』は、アップル提供資料を参照しながら、iCloudがGoogle Cloudをデータ保存先とする際のセキュリティについて論評する記事を掲載した。それによると、ユーザの画像や連絡先を含むiCloudのデータは暗号化された多数のチャンク(数字のかたまり)に分割される。チャンクからデータを復元する時に使われる暗号化キーとチャンクのメタデータは、アップルが保存する。そして、チャンクのほうがGoogle Cloudやアマゾン・ウェブ・サービスに保存されるのだ。なおチャンクは暗号化されているので、チャンクから個人情報が特定されることはない。

 以上のようなiCloudの仕組みを踏まえたうえで、同記事ではグーグルは保存データに関する管理責任があり、なおかつアップルのような契約金が数億ドルと見込まれる法人の顧客に対してはデータを慎重に扱うインセンティブが働くことを指摘している。また、アップルはGoogle CloudをiCloudのデータ保存先に採用したことで、同サービスのアマゾンへの依存度を減らすことができると述べて評価している。

◆積年のライバルが歩み寄り?
 以上のようなiCloudをめぐるアップルとグーグルの技術提携が両社の関係に及ぼす影響に関しては、テック系ニュースサイト『CNET』が論じている。その記事では、iCloudにおいて両社の技術提携が確認できたからといって、グーグル・マップやユーチューブ・アプリがアイフォンのデフォルト・アプリ(最初からインストールされているアプリ)になるようなことは期待できない、と述べられている。

 とはいえ、この技術提携は転換点だと評している。そのように言える論拠として、同記事はアップルの創業者にして前CEOの故スティーブ・ジョブズ氏が、かつてグーグルが開発したスマホ対応OSであるアンドロイドがiPhoneのOSとそっくりなことに激怒して「アンドロイドなんて壊してやりたい、こんなものは盗作だ。こいつに熱核攻撃を食らわせてやりたい」といった有名なエピソードを引用している。

Text by 吉本 幸記