なぜスナップ株急落? フォロワー2500万セレブの影響力か、その他の要因も?

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 写真に視覚効果を合成することで人気を博していたSNSカメラアプリ「スナップチャット」がデザインを一新したことに対して、アメリカのインフルエンサーであるカイリー・ジェンナーが否定的なツイートをした翌日、同アプリを開発するスナップの株価が7%下落した。この株価下落と彼女のツイートとの因果関係については、様々に報じられている。

◆ボットが過度に拡散か
 CNBCによると、2月22日、スナップの株価が突如7%下落した。この下落により、同社株の時価総額から10億ドル(約1,070億円)が失われることとなった。この下落の前日、アメリカで絶大な影響力のあるセレブ一家カーダシアン家の末っ子でインフルエンサーでもあるカイリー・ジェンナーがスナップチャットをもう使わないとツイートしていた。彼女がそのようにツイートした理由は、同アプリがデザインを一新したことによって使いづらくなったと感じたからであった。同アプリの新デザインは、かねてからユーザに不評だったのだ。

 彼女のツイッターアカウントには2,450万人のフォロワーがいるのだが、CNBCの記事では彼女のツイートが急激に拡散して市場にまで影響を及ぼした原因としてボットの存在を指摘している。というのも、プロフィール画像が同じふたつのアカウントが、瓜二つの挙動で彼女のツイートを拡散したことが確認されたからだ。このふたつのアカウントが同じメッセージをツイートし、シェアしているウェブサイトまで同じことから、アンチウイルソフトが「悪意のある」ボットであると断定したと同記事は伝えている。

◆株取引アルゴリズムが反応か
 フォーチュン誌は「最近起きたスナップの時価総額10億ドルの損失は、なぜカイリー・ジェンナーのせいにされるのか」と題した記事において、スナップの株価下落の原因を分析している。同記事は、件の株価下落は株取引アルゴリズムが拍車をかけているのではないか、と見ている。

 現在、多くの投資家は株取引にコンピュータが市場を分析して投資先を決定するアルゴリズムを使用している。このアルゴリズムが株の売買を決定する判断材料として、SNSに対するユーザの感情というものがある。つまり、あるSNSが人気であればそのSNSを運営する会社の株を買い、反対にSNSが不評になったら運営会社の株の売却をコンピュータが実行するのだ。そして、スナップチャットの不評に株取引アルゴリズムが反応してスナップ株を売却し、さらにその売却の動きにほかの株取引アルゴリズムも同調した結果、同社の株の売りが殺到したというわけである。

◆予期されていた株価下落
 テック系ニュースサイト『テッククランチ』もまた、スナップ株下落の原因はカイリー・ジェンナーのツイートだけではないとする記事を掲載した。その記事では、彼女のツイートと同じくらい重大な原因として、アメリカ有数の金融グループであるシティが株価下落に先立つ2月20日にスナップ株の評価を下げたことをあげている。「数週間前に発表されたスナップのフラッグシップ・アプリの新しいデザインは同社に長期的な利益をもたらすことができたのだが、新デザインに関するネガティブなレビューが顕著に見られるため、ユーザおよびユーザとのエンゲージメントが減少するにいたるだろう。こうしたことが同社の財政にネガティブに影響する結果となるだろう」という分析をシティは発表したのだ。

 スナップチャットのデザイン一新に関しては、スナップのCEOエヴァン・スピーゲル氏は同社としてはある程度のユーザからの否定的な反応を覚悟していた、と述べていた。そうした反応として、署名活動支援サイトChange.orgにおいて同アプリの刷新を撤回するキャンペーンが立ち上がっており、120万人以上がキャンペーンに署名していることを同記事は報じた。

Text by 吉本 幸記