Chromeに「悪質広告」をブロックする機能 グーグルが3段階で判定
インターネット利用時にしばしばユーザを悩ませるものがウェブ広告である。しかし、ウェブ広告が存在することによってユーザは無料でウェブサイトを閲覧できている。こうしたなか、グーグルは同社が開発するウェブブラウザのChromeにウェブビジネスに大きく影響を及ぼす機能を実装することを発表した。
◆より快適なウェブ環境のために
テック系ニュースサイト『The Verge』によると、グーグルは2月15日より悪質なウェブ広告を非表示にできる機能をChromeに標準実装することを発表した。同機能における悪質な広告の判断はグーグルが行い、その判断基準も公表されている。ウェブサイト閲覧環境がPCの場合、ポップアップ広告、大きなスティッキー広告(画面スクロールに合わせて表示される広告)、音声や動画を自動再生する広告、そしてカウントダウン機能付きのプレスティシャル広告(サイトコンテンツのロード中に表示される広告)がブロック対象となる。モバイル機器の場合には判断基準はさらに厳しくなり、画面に対して30%以上広告が表示される場合も悪質とみなされる。判断基準についての詳細は、Chromeの開発者向けブログ記事にまとめられている。
以上のような判断基準にしたが、同社はウェブ広告を「許可」「警告」「欠陥あり」の3種類にランク付けする。広告主は出稿した広告のランクを確認することができ、「警告」や「欠陥あり」の場合には後日再びランク付けを受けることができる。悪質広告に対しては同社から警告メッセージが送られ、そのメッセージ受信後30日にわたり広告の改善を行わない場合、広告が非表示にされる。こうした悪質広告をブロックする機能を有効にするか否かは、Chromeのユーザの選択に委ねられている。
◆ウェブ広告の撲滅はめざしていない
もっとも、ブロック対象となった広告は全く表示されなくなるわけではないことをテック系ニュースサイト『Venture Beat』の記事は伝えている。ブロック対象の広告は、ブロック開始から最初の2ヶ月間は7.5%の表示頻度となり、ブロック開始から半年が経過すると表示頻度が2.5%まで低下する。2.5%という表示頻度は、40ページビューに対して1回表示されることを意味する。同記事では、悪質広告を完全にブロックしないのは悪質広告を完全に除去できないサイトに対する救済措置ではないか、としている。
悪質広告ブロック機能に関して、Chrome開発部門のヴァイス・プレジデントのラウール・ロイ=チョードゥリー氏は次のように述べている。「わたしたちChrome開発チームは、目障りな広告に嫌気がさしてアド・ブロッカーをインストールするユーザをたくさん見てきました。しかし、すべての広告をブロックすることは、ユーザに迷惑をかけていないウェブサイトと広告主まで傷つける恐れがあります。そこでブロックの対象をユーザに迷惑な広告だけに的をしぼることにより、ウェブのエコシステムの健全性を確保することを助け、同時にユーザに現在より有意義なウェブ体験を提供することができるのです」
◆広告収入への依存から脱却する動きも
テック系ニュースサイト『CNET』によると、悪質広告ブロック機能の発表に先立ち、グーグルはすでに広告の審査をしていた。審査の結果、審査したサイトのうち42%で警告対象となる広告が見つかり、そのサイトにはロサンゼルス・タイムズ、フォーブス、そしてシカゴ・トリビューンが含まれていた。
広告がブロックされることで窮地に立たされるウェブメディア業界では、広告収入に頼らないビジネスモデルを模索する動きがある。例えばワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズは、ウォール・ストリート・ジャーナルが導入した、一部の記事の閲覧に購読料の支払いを求める「ペイウォール」を採用している。また、ニュースサイト『Salon』は、ユーザが仮想通貨のマイニングに協力すれば広告を非表示にするという仕組みを実験している。