iPhone低速化、仏当局が「計画的陳腐化」の疑いで調査開始 エプソン製品も

Anna Hoychuk / Shutterstock.com

 アップルが秘密裏にiPhone旧機種の速度を低下させていた問題で、フランスの検察庁は1月9日、当局が公式な調査に乗り出したことを明らかにした。

 検察当局によると、アップルの一部製品に「不正行為および計画的陳腐化」が疑われるとして、先週から予備的捜査を開始したという。(計画的陳腐化とは、主に新商品販売促進のため、故意に製品の性能を低下させる行為。)捜査を主導するのはフランス財務省の不正規制担当部門だ。

 今回の捜査のきっかけとなったのは、2017年12月にフランスの消費者保護団体がアップルによる製品の「計画的陳腐化」を阻止するための訴訟を起こしたことだ。

                                                                                                                 

 消費者の商品買い替え促進を目的に、故意に製品の機能を低下させるのはフランスでは違法行為とされている。2015年にはこれを取り締まる法律が制定され、最長2年間の禁錮刑と最大で年間収益の5%の罰金刑が課せられるようになった。

 2017年12月、アップルはひそかにiPhone旧機種の速度を低下させていたことを認め、謝罪した。同社は速度低下の理由について、バッテリー老朽化による予期せぬシャットダウンを防ぐための必要措置だったと話している。現在アップルでは謝罪対応の一環として、旧機種のバッテリー交換を通常より50米ドル(約5600円)値引きした29米ドル(約3200円)で対応中だ。

 一方で、旧機種の速度低下は新機種販売促進のために故意に行われたことではないか、という疑念に対し、アップルはこれを否定している。同社は「我々は故意にアップル製品の寿命を縮めたことも、ユーザー体験を低下させて顧客にアップグレードを促したことも決してない。これからもそのようなことは断じてない」と自社ホームページで声明を発表している。

 AP通信ではアップルのフランス支社に対して最新の法的展開に関するコメントを求めたが、メールと電話のいずれにも返答はなかった。

 同社に対しては、アメリカとイスラエルでも訴訟が起きている。

 市場リサーチ会社、クリエイティブ・ストラテジー(Creative Strategies)のアナリストであるキャロライナ・ミラネシ氏は、アップルが旧式iPhoneの機能を抑制することで、ユーザーは毎年同社が実施する無料ソフトウェアアップデートの新機能を利用することができ、結果的にデバイスの寿命が延びると考えている。

 ミラネシ氏は最近の分析において、つまるところ同社には「スマートフォンを最高速で稼働させて老化した電池の寿命を縮めるか、もしくは速度を落として電池の寿命を延ばすか」という二択しかなかったと記している。

 フランスの消費者団体「Halte l’Obsolescence Program(通称HOP)は2017年12月27日、アップルが同時期に販売開始された新iPhone8の販売促進のため、故意に旧機種の速度を低下させたとして訴訟を起こしている。

 ベンチマークテストを実施したところ、速度低下は著しいとは言えないものの、注目に値する、という結果が出ている。アップルはこれを、老朽化したバッテリーが予期せぬシャットダウンを起こさないための措置だと述べている。しかしHOPの訴状によると、同社が即座にそれを公表しなかったことにより、一部のユーザーが電池交換ではなく、処理能力の速い新製品への買い替えが必要なのだと誤解してしまったとして、同社の過失を追及している。

 HOPのディレクターであるレティシア・バスール氏は、調査の結果、速度低下のピーク時期と新商品の発売時期が一致していることがわかったと話す。

 同氏はAP通信に対し、「速度を低下させることで新機種購入を促す、という意図を感じる」と語った。

 バスール氏は自身のグループが訴訟に引き続き、ユーザーが直面した問題をレポートしてもらうための調査を開始したと話した。同氏によると、開始から10日間でHOPには3000件を超えるレポートが寄せられており、それらは政府の詐欺監視機関である「競争・消費・詐欺防止総局(DGCCRF)」に提出するという。

 バスール氏は自身の活動が世界的に影響を及ぼし、「同種のスキャンダルに直面したくないすべてのメーカーが」より持続可能で耐久性のある製品を展開してくれるようになれば、と望んでいるという。

 同様にHOPの訴訟に基づいた事例として、11月には日本のプリンターメーカーのエプソン(EPSON)にも捜査が実施されている。

 エプソンに対する捜査は、パリ郊外のナンテールにある検察当局によるもので、一部のインクカートリッジとプリンターのスペアパーツが対象だ。HOPは今回の捜査について、フランス初の「計画的陳腐化と不正」に対する訴訟だと見解を述べている。

 エプソンは、計画的陳腐化は会社の方針ではないとし、一切の違法行為を否定している。

 フランスの司法制度では、予備的捜査を実施および指揮するのは検察当局だ。捜査は数週間から数ヶ月に及ぶこともある。捜査終了後、検察官は訴訟を見送るのか、あるいは予審判事による審査でさらなる捜査を行うのか、を判断する。その後、予審判事もまたこれを証拠不十分などの理由で取り下げるか、管轄裁判所で訴訟を行うかを決定することができる。このような場合、すべての過程が終了するまでに数ヶ月あるいは数年を要することもある。

 エプソンとアップルのケースは、計画的陳腐化に対して行われる初めての訴訟であるため、このような罪に対して裁判所がどれほどの刑罰や罰金、また損害賠償を課すのか、判例がない。

 金額にかかわらず、アップルに罰金が科せられた場合、痛むのは懐ではなくその誇りだろう。アップルのiPhoneをはじめとする製品の販売総額は、累計で約270億米ドル(約3兆510億円)にのぼっている。

By SYLVIE CORBET and PHILIPPE SOTTO, Paris (AP)
Translated by isshi via Conyac

Text by AP

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