アップルとグーグル、中国ネット大会に初参加 2巨頭も抗えない巨大市場の魅力

Chinatopix Via AP

 インターネットの検閲を強めようとする中国政府の構想を推進するために同国で開催されたインターネット大会にアップルとグーグルの二大巨頭が出席して大きな注目を浴びたが、今後ますます利益が見込まれると同時に、制約の多い中国市場へ進出しようとするアメリカのハイテク企業にとってのジレンマも浮き彫りとなった。

 上海郊外の歴史的な運河の街、烏鎮で開催された今年の世界インターネット大会に、世界最大のハイテク企業2社のトップが初めて参加した。

 アップルのCEO、ティム・クック氏は、12月3日から始まった同大会の席上、聴衆に向かい、同社は中国のパートナーと協力して「サイバースペースにおける共通の未来」を構築していくことを誇りに思う、と話した。

 一部のアナリストは、同氏とグーグルのCEO、サンダー・ピチャイ氏が他のビジネスリーダー、外交官、および各界の専門家たちと同席したことは、シリコンバレーを拠点とする各社の標榜する自由なネットアクセスに対する貢献とは激しく対立している中国当局が望むインターネット像への信用度を高めることになった、と評した。

 中国の習近平国家主席は、本大会に向けたメッセージの中で「中国は世界に向けた扉を閉ざすことはない。今後ますます開かれていくのみだ」と明言した。

 中国のインターネットユーザーは、同国の公式な政策によって広範囲に及ぶ監視と検閲に直面し、いわゆる中国のグレート・ファイヤーウォール(金盾)によって海外の多くのサイトにアクセスすることが禁じられているが、これに反し、大会主催者は出席者がインターネットに無制限にアクセスすることを許可した。

 習主席は2012年に実権を掌握して以来、統制を強化し、表現の自由をますます抑圧した、と活動家は語る。

 中国当局の統制は、グーグル、ツイッターおよびフェイスブックなどアメリカの企業にまで及び、それら企業の多くが中国市場からの撤退を余儀なくされ、その市場はテンセント(騰訊)のように中国内で創業したインターネットの巨人にのみ開放されている状況である。

 アップルは中国内に大規模な生産拠点を擁しており、同国は同社の最大の市場の1つでもあるが、昨今、中国内のスマートフォンメーカーがアップルを猛追している。

 アプリ開発者の一部には、アップルが中国の検閲への要求を遵守していることを批判する者もいる。7月には、バーチャルプライベートネットワーク(VPN)プロバイダーとして知られ、ユーザーに政府のインターネットフィルタリングを迂回させることができる複数の企業が、自分たちのプログラムが中国内のアップストアから削除されていた、と述べた。そのような企業の1つであるエクスプレスVPN社は、アップルは「中国の検閲の努力に加担している」とした。

 中国は今年、バーチャルプライベートネットワークアプリの開発者が政府の発給するライセンスを取得するよう求めるようになった、とアップルは語る。そして、このカリフォルニアに本拠地を置くハイテク企業大手は、「中国内で新しい規制を満たさない」アプリを削除した、と話した。この件についてアップルの広報担当者2名に電話で接触を試みたが、コメントは得られなかった。

「問題は、これらの企業が板挟みになり立ち往生していることだ」と、大会に出席したライデン大学の中国研究者、ロジエ・クリーマーズ氏は語った。中国の巨大な市場は、そのような企業にとって垂涎の的だが、アップルのケースと同様、現地の法律が「西洋の観測筋が不快感を覚えるようなことを要求」している、と同氏は言った。

 ティム・クック氏のスピーチは大勢の人が聴講した。同氏は、アップルは中国内で500万人以上の雇用を支援しているとし、同社のアップストアを通じて入手できるアプリの開発においては180万人のソフトウエア開発者が1120億元(1.9兆円)以上を稼いだ、と述べた。

 また、同氏は「テクノロジーへの人間性の注入」を確約することがアップルの責務である、とも言った。スピーチの記録によると、クック氏は、微妙な話題に対する直接的な言及は避けたが、「プライバシー、セキュリティ、そして品位という誰もが保護される予防措置」の必要性を強調することで、同国の検閲や監視への批判をほのめかした。

 グーグルは、検閲に関わる懸念から、2010年に同社の中国語版検索エンジンを中国市場から撤退させた。そしてピチャイ氏は今回、中国市場への再参入の希望を語り、烏鎮でのパネルディスカッションでは、サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙の報告によると中国の中小企業は同社の検索サービスを利用して製品を他国に提供している、と語った。

 しかし、アップルとグーグルの広報担当者からのコメントは得られなかった。

 現在のアメリカの政治情勢が他の懸案事項とは関係なくビジネスを推進する上での実用的なアプローチを奨励しているため、大手ハイテク企業はこの大会に出席することを決めた可能性がある、とノッティンガム大学中国政策研究所のジョナサン・サリバン所長は語る。

「アメリカ企業がビジネス至上主義のアプローチを追求してホワイトハウスから呼び出される可能性がこれほど低い時は、これまで一度も無かった」と同氏は話した。

By KELVIN CHAN, Hong Kong (AP)
Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP