嘆願書の効果? アップル、ドゥテルテ比大統領の麻薬撲滅ゲームを削除

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 以前リリースした記事「ドゥテルテ比大統領の麻薬戦争ゲーム、人権団体らがアップルに削除と謝罪を要請」の続報として、アップル社がゲームをApp Storeから削除した件をお伝えしたい。

◆削除されたゲーム
 プレイヤーがフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領になりかわって犯罪者を殺すゲームがアップルのApp Storeから削除された(BBC)。

 削除されたのは、「Duterte knows Kung Fu: Pinoy Crime Fighter(デュテルテはカンフーの達人:フィリピンの犯罪取締人)」を始めとした4つのゲームである。いずれも、デュテルテ大統領か、ロナルド・“バト”・デラロサ国家警察長官が犯罪者を撃ち殺すものだった。

 ニュースサイトMashable UKによると、100万人以上のiPhoneユーザーにダウンロードされていたゲームもあったという。

 なお、Google Playには、Androidユーザー向けの類似ゲームがまだ存在している。いくつかは人間でなくゾンビを撃つゲームだと主張している。(BBC)

◆ゲームの削除は嘆願書の力か
 アジア薬物使用者ネットワーク(Asian Network of People Who Use Drugs: ANPUD)(薬物使用者の健康と人権保護を推進する擁護団体)は以前、Appleのティム・クック社長にゲームを削除するよう嘆願書を送っていた。「(ゲームが)フィリピンにおいて、殺人、超法規的殺人、暴力、薬物撲滅キャンペーンを助長する」ことを理由とした(BBC)。

 この嘆願書には全部で131の団体が署名していた。嘆願書が送られ、公開されたのが今年の10月のことである(フィリピンのニュースサイトRAPPLER)。

 ANPUDは、クック氏もしくはアップル社から直接回答されていないものの、その努力を勝利として評価している(Mashable UK)。

「メディアの注目を大いに集めることができ、ゲームのいくつかがApp Storeから削除された。嘆願書という試みは成功した。この事例のプロセスの詳細を文書化し、それを広める予定だ」とANPUDはウェブサイトの声明で述べている(RAPPLER)。

◆デラロサ国会警察長官の主張
 ゲームのキャラクターにもなったデラロサ国会警察長官は、フィリピン・スター紙に「ゲームの削除はいい考えだ」と語っている(BBC)。

 また、「麻薬取締のための国家の活動は殺害や暴力ではない」「彼ら(アプリ作成者)は間違った解釈をした。麻薬撲滅作戦は人々を撃つことではない」と記者に語った。

 ロナルド国会警察長官はさらに、「警察官が家を回って、容疑者に違法な麻薬関連の活動を辞めるよう説得すること」が麻薬撲滅作戦の内容だと主張している。

 ◆終わらない麻薬撲滅運動の問題
 人権擁護団体「ヒューマンライツウォッチ」によると、麻薬撲滅運動の最初の6ヶ月間で少なくとも7,000人、1年間で12,000人以上の犠牲者がでているという。犠牲者のほとんどが麻薬の売人もしくは使用者の疑いをかけられていて、半数以上は国家警察により違法に射殺されている。このため、人権問題とされている。(BBC、Mashable UK)

 ドゥテルテ大統領は、麻薬撲滅運動において超法規的殺人を公然と公式に承認している。

Text by 鳴海汐