「移民よりロボットなの!?」 抵抗感なく導入進む日本に海外が興味津々
少子高齢化に伴い日本では人手不足が深刻になっているが、それを補うように、さまざまな業界でロボットの導入が進みつつある。欧米では労働者不足を移民で補う政策が一般的だが、それとは異なるロボット大国日本らしいアプローチだとして海外各紙で紹介されている。
◆幅広い産業で開発が進むロボット
ガーディアン紙は「葬式の未来?」と題し、ソフトバンクが手がけるロボット『ペッパー』が僧侶役を果たすサービスを紹介している。僧侶に依頼すると高額になる費用を約5分の1にまで抑えられるほか、参加が難しい遠方の親族に向けてライブ配信するオプションもあるなど、合理的なサービスと評価しているようだ。
別の例としてCBSニュースは、長崎のハウステンボスに隣接する『変なホテル』というホテルを紹介する。ロボットを大規模に導入した結果、本来35名の従業員を必要とするところ、たった7名で賄うことに成功しており、世界中のホテル経営者が注目しているとのことだ。同ホテルのサイトでは、フロントで複数言語を使いこなすロボットのほか、窓拭きや芝刈り役に至るまで様々な「従業員」が紹介されており、ユニークな宿泊体験で高評価を得ているようだ。
他にも、フィナンシャル・タイムズ紙は自動運転の農耕車を紹介している。欧米の広大で平坦な土地とは異なり、ぬかるんだ日本の水田向けに開発するのには苦労があったらしい。同様の特徴を持つアジア地域に向けて輸出も検討しているようだ。葬儀、ホテル、農業など、日本の幅広い業界に「就職」するロボットが海外で注目されている。
◆少子高齢化で、介護施設での需要急増
欧米では一般的に「どこか不気味なもの」というロボット観が根強い。日本で広く受け入れられているのは、ブルームバーグ(8月23日)が指摘するように、鉄腕アトムなどの文化からくる親近感があるかもしれない。同メディアは「このキャラクターへの文化的な愛着により、生活の中のロボットとテクノロジーに容易に打ち解けることができている」と見ている。
キャラクター性は一つの重要な要素のようで、フォーリン・ポリシー誌では理研が開発したクマ型の介護ロボ『ロベア』を取り上げている。白くまをデフォルメした可愛い見た目のこのロボットは、時に強い力で持ち上げ、時に優しく触れて介護するとのことだ。
サウスチャイナ・モーニングポスト紙でも、ロボットの導入を進める日本の介護施設を記事にしている。ある施設で複数の介護ロボを導入したところ、高齢者らも不安がることはないばかりかロボットに興味を示しており、リハビリの意欲も向上したらしい。需要が高まるケア施設の現場で、ロボットの活躍は広がりそうだ。
◆移民への抵抗感でロボットの必要性が高まる日本社会
欧米でも労働人口の不足に悩む国はあるが、ロボット導入が日本を中心に進んでいるのはなぜだろうか? それは移民政策への抵抗感の裏返しかもしれない。フォーリン・ポリシー誌では、アメリカのケア施設では、介護士はほぼ移民が務めているという。一方日本ではこのような介護施設はまだ少数だ。
日本でも外国人介護士の登用はないわけではなく、同誌では福岡のある施設で12人のインドネシア人介護士が働いていることを伝えている。しかし現実は厳しく、厳格な日本語テストに受からなければ帰国を強いられてしまうとのことだ。2014年には8割が不合格となったようで、言語の壁の大きさが感じられる。
外国人労働者の不遇はブルームバーグでも取り上げている。移民の登用が始まる一方、正規雇用への受け入れ拡大については民間に強い抵抗感が残るとしている。同メディアはロボットの登用拡大も一定のメリットがあると見ており、生産性の向上によって人間の賃金の上昇、ひいては消費拡大が期待できるとしている。ロボットの受け入れ拡大の動きは、移民に否定的な日本なりの少子高齢化対策と分析しているようだ。