「世界最大の都市」東京が首位転落 国連報告書が示す「急速な都市化」のリスク

ジャカルタ|Creativa Images / Shutterstock.com

 国連の報告書によれば、地球上の人口のほぼ半数が現在都市部に居住しており、人口1000万人以上のメガシティが増加している。都市化にはメリットもあるが、無秩序な拡大は環境や市民生活の脅威となる可能性もはらんでいる。世界で最も人口の多い都市、インドネシアの首都ジャカルタでは、急速な都市化による弊害が顕著で、対応の難しさが示されている。

◆増える巨大都市 東京はトップから陥落
 「世界都市化予測2025」と題された国連の報告書によると、世界で最も人口の多い都市はインドネシアのジャカルタとなった。ジャカルタの人口は、カナダの人口にほぼ相当する4200万人と推定される。2018年の前回ランキングの33位から急浮上という結果になった。

 もっともこの変動は、これまで国によってバラバラだった人口推計の手法が統一されたことに大きく影響されている。新手法では、旧基準で除外されていたジャカルタの都心部に接続する人口密集地域も対象とされ、従来の基準より3000万人多くの人口が計上された。この結果、これまで1位だった東京は、実は2010年頃を境に、ジャカルタに首位を奪われていたことが明らかになったという。

 報告書によれば、地球上の人口82億人のほぼ半数が都市部に居住しており、過去75年間で、都市に暮らす人の割合は20%から45%へと2倍以上に増えたという。また、1975年には人口1000万人以上のメガシティはわずか8都市だったが、2025年には33都市に増加。そのうち19都市はアジアに位置する。人口ランキングの上位10都市のうち9都市がアジアに集中しており、2050年までには、バングラデシュの首都ダッカが首位に立つと予測されている。

◆都市化の弊害 ジャカルタの実情は……
 英ガーディアン紙は、都市化のメリットは明らかだとし、都市は、社会および経済の発展を促進する生産性、創造性、多様性の中心地であると指摘する。しかし、さまざまなチャンスやサービスを享受できる一方で、甚大な不平等、住宅の過密、インフラの不足や欠如といった問題があるのも事実だと述べている。

 都市化の弊害が顕著に出ているのが、ジャカルタだ。過去数十年にわたる劇的な成長は、農村部から都市部への大規模な移住に加え、新たな開発やインフラプロジェクトによって推進されてきた。しかしこの成長は、都市部と周辺地域に非公式居住区を生み出し、貧困層や労働者階級のスラムが築かれるなどの深刻な経済格差を浮き彫りにした。こうした地域に住む人々は、清潔な水や電力などへのアクセスを欠くことが多い。また、成長はジャカルタに汚染、渋滞、インフラの逼迫といった問題をもたらした。特に、ジャカルタ北部などの低地では地盤沈下によりすでに海面下に沈む地域もあり、用水路や下水道システムに深刻な影響が出ている。(米ニューヨーク・タイムズ紙、以下NYT)

 インドネシア政府は、首都機能をジャカルタから移すことを目的とした新都市建設を開始しているが、米NBCニュースによれば、計画は建設遅延、海外からの投資不足、管理や土地の問題など、複数の障害に直面しているという。

◆急速に進む都市化 国の介入、改革は必須
 国連経済社会局(UNDESA)のリー・ジュンホワ(Li Junhua)事務次長は、都市化は現代を特徴づける力だとし、包括的かつ戦略的に管理されれば、気候変動対策、経済成長、社会的公平性に向けた変革の道を開くことができると述べ、各国が総合的な政策を採用すべきだと呼びかけている(NBC)。

 今後の都市人口の増加の大半は、サハラ以南アフリカや中央・南アジアで起きると予測されている。UNDESA政策調整担当事務次長補のビョルグ・サンドキア(Bjørg Sandkjær)氏は、都市が拡大するにつれ、インフラや教育、衛生などあらゆる面で全人口をカバーすることが難しくなり得ると指摘し、成長の初期段階から都市計画と適応策を講じる必要があると強調している。(NYT)

Text by 山川 真智子