カリフォルニア州、トイレの水を飲料水にリサイクルすることを承認
長期にわたる記録的な干ばつの影響と水需要の拡大に伴い、深刻な水不足に直面しているアメリカ・カリフォルニア州。下水や雨水などの排水を処理し、農業用水や工業用水、修景、地下水涵養(かんよう)などに再利用してきたが、水不足は解消せず、州当局は、廃水を飲料水として再生利用することを認める方針を発表した。それによりトイレで流した水が、キッチンの蛇口にも流れることになる。
◆「トイレから蛇口へ」再生水が水不足解決の糸口
カリフォルニア州規制当局は12月19日、水道会社にリサイクルした廃水を送水管に戻し、家庭や学校、事業所に飲料水として供給する給水規則を承認した。この規則によって、高度に処理された水をそのまま飲料水システムに入れたり、ほかの供給源と混ぜたりする、いわゆる「直接飲用再利用」が可能になる。3900万人を超える住民のために信頼できる飲料水源の確保に何十年も苦労してきた州にとって、これは大きな一歩だ。
かつて「トイレから蛇口へ」と批評家に揶揄(やゆ)された廃水を再利用する技術は、近年、気候変動による干ばつサイクルの悪化に直面し、水に対する危機感の強いカリフォルニア州で、より高い信頼を得ている。
カリフォルニア州は何度も極端な干ばつに見舞われ、なかでも直近の干ばつは、州の貯水池を危険的レベルまで低下させ、過去3年間で最も乾燥したものとなった。
州水資源管理委員会が採択したこの規則は、10年以上の歳月をかけて策定された。毎年何億ガロンもの廃水が未利用のまま海に放水されていたが、一部を再生利用する画期的な対策になる、と支持者は言う(ロイター、12/20)。
カリフォルニア州では何十年もの間、再生廃水を利用している。マイナーリーグホッケーチームのオンタリオ・レインは、南カリフォルニアのリンクの氷を作るために処理済み廃水を利用。レイクタホ近くのソーダ・スプリングス・スキー・リゾートでは、雪を作るために使用、全米の野菜、果物、ナッツの多くが栽培されているセントラルバレーの農家では、農作物の水やりに使用されている。しかし、これまで飲料水として直接利用されたことはない。(AP、12/12)
たとえば、ロサンゼルス大都市圏を擁するオレンジ郡には、この種のプロジェクトとしては世界最大規模の地下水涵養システムがある。このシステムは、3段階の高度処理プロセスで廃水を浄化し、その水を地下水盆に浸透注入して水源の一部として間接利用する。水は地下水と数ヶ月間混ぜ合わせてから取水され、再び飲料水として使用される。その過程で、水は活性炭フィルターや逆浸透膜を通過し、紫外線による消毒など、さまざまな段階を経て処理される。同郡の地下水涵養システムは今年初め、1日の生産量を1億3000万ガロンに増やし、100万人分の需要を満たしている。
新しい規則では、さらにオゾン消毒と生物学的炭素ろ過に加えて、あらゆる病原菌やウイルスのより完全な除去と、より厳しいモニタリングも義務付けられている。徹底的な浄化を義務付けているため、最後にミネラルを添加して一般的な飲料水に近い味と化学的性質にする。
州水道局飲料水部門ダリン・ポレマス副局長は「これは、一般市民に提供される水のなかで最もよく処理された、最高品質の水になるでしょう」と太鼓判を押す(ロサンゼルス・タイムズ、12/17)。
この計画はまた、都市にとって他地域からの水輸入への依存を減らし、再生水の利用を拡充するための新しい手段になる。より多くの廃水をリサイクルすることで、沿岸水域に放出する処理排水量を削減するなど、環境上の利点もある。
浄化された再生水は、干ばつ状態の一部の沿岸地域の供給量のおよそ10%から15%を占めるようになると予想されている。「いつの日か、いくつかのコミュニティの水供給の25%から40%を占めるようになるかもしれません。現在海に放出されている廃水の大部分を、処理済み廃水として再利用することが実現可能になるかもしれないのです」とポレマス氏は言う。(ロサンゼルス・タイムズ)
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