プランクトンがマイクロプラスチックを無数の微小粒子にしていることが判明 海洋汚染悪化の可能性

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◆マイクロプラスチック0.01ミリから数千個のナノプラスチック排泄
 研究チームは2018年に、南極のオキアミがポリエチレンボールを1マイクロメートル以下の破片に分解できるということを聞きつけ、水生生物がマイクロプラスチックの生成にどのような役割を果たすかを調べることに関心を持った。マサチューセッツ大学アマースト校ストックブリッジ農学部のバオシャン・シン教授(環境・土壌化学)は、ワムシがオキアミに似た特殊な咀嚼(そしゃく)器を持っていることから、ワムシを調べることにしたという。世界中に2000種いるワムシもプラスチックを分解できるという仮説を検証しようと考えた。

 海産および淡水産のワムシをさまざまな大きさのプラスチックに暴露した結果、すべてのワムシが最大10マイクロメートル(0.01ミリ)のマイクロプラスチックを摂取し、分解した後、数千個のナノプラスチックを環境中に排泄することがわかった。ワムシの体内からは、ナノプラスチックだけでなく、食品容器に含まれるポリエチレンのマイクロプラスチックも検出された。

 シン教授は、「この研究は最初の一歩に過ぎない。マイクロプラスチックの生物学的断片化について、陸上や水中のほかの生物を調べ、毒物学者や公衆衛生研究者と協力して、このナノプラスチックの大発生が私たちに何をもたらしているのかを解明する必要がある」と語る。

 中国海洋大学環境科学・工学教授で、論文の筆頭著者であるジアオ・ジャオ氏は、「世界中の淡水系と海水系の両方でナノプラスチックを生成・発生させる経路としてよく知られている物理的・光化学的な断片化に加えて、今回、新たに生物学的断片化が発見された。この発見は、ナノプラスチックの世界的な流束を正確に評価するのに役立つだろう」と語る。さらに、「ナノプラスチックはさまざまな生物に有毒である可能性があるだけでなく、ほかの汚染物質のキャリアとしても機能する。また、プラスチックに含まれる化学添加物の放出は、破砕中や破砕後に促進される可能性がある」と指摘した。

Text by 中沢弘子