ブドウ畑周辺住民の農薬暴露問題、仏で調査進む
◆フォルペットとスピロキサミン
ジェネラシオン・フュチュールは、ブドウ園から5、10、25、50、60、515メートルの空気中の農薬を調べたが、100メートルを超えると農薬の量は減ったものの、515メートル離れた場所でもゼロにはならなかった。フランスでは人口の4%(約260万人)がブドウ園から200メートル以内に居住している。
この調査で空気中に最も多く認められた農薬成分はフォルペットだった。フォルペットは、ブドウのべと病に効果があるとしてブドウ栽培でよく用いられる農薬だ。だが、欧州連合(EU)はカテゴリー2の発がん性物質に分類している。またフォルペットは多くの場合、ほかの化学物と混ぜて用いられるが、それによって危険性が増すとも考えられている。
フォルペットのほか、スピロキサミンも多く検出された。この農薬はヒトへの生殖毒性が疑われており、2023年末にはヨーロッパでの使用認可期限が切れる予定だ。
これらの結果から、ジェネラシオン・フュチュールはフランス政府に対し、フォルペットの禁止と、スピロキサミンの再認可を認めないようEUに圧力をかけること、また人家から半径100メートル以内では農薬を用いないとすることを求めている。
◆明らかになった子供の白血病発症リスクとの関連
それとは別に、フランス国立保健医療研究所(INSERM)とパリ・シテ大学の共同ラボCRESSが2016年から、ブドウ園と子供のがん発症の関係に関する調査に取り組んできた。研究者らは、2006~2013年の間に白血病を患った15歳未満の子供3711人のデータと、同じ年齢の病気を発症していない4万196人の子供のデータを用い、彼らの居住地周辺のブドウ園の有無と、その表面積との関連を調べた。
10月18日に発表されたその調査結果によれば、子供が「リンパ芽球性」型白血病を発症するリスクは、住環境の半径1キロ以内にあるブドウ園の表面積に比例することがわかった。具体的には、半径1キロ以内のブドウ園の面積が10%増加するごとに、発症リスクが平均10%増加するというものだ。
フランスでは、白血病は小児がんの約30%を占め、毎年約500人の子供が白血病の診断を受けている。そのうち80%がリンパ芽球性白血病で、残りの20%は骨髄性白血病だ。今回の研究でブドウ園との関連が認められたのは、リンパ芽球性白血病のみで、骨髄性白血病の発症数とは関連が見られなかった。
上記の研究とは別に、現在フランス健康安全局(ANSES)とフランス公衆衛生局も、ブドウ園の近くに暮らす住人3350人の農薬への暴露に関して調査中だ。対象となる住人の毛髪と尿を検査し、約50の農薬成分の痕跡を調べるという内容で、結果は2024年に発表される予定となっている。(ウェスト・フランス紙)
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