世界の4人に1人が極度な水不足 50年までに10億人増加

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◆世界規模で水の需要倍増
 水の需要は世界規模で利用可能なレベルを上回っており、1960年来2倍以上に増加している。2050年までに20~25%増加すると予測されている。北米や欧州では水の需要が頭打ちになっている一方で、アフリカで急増している。現在から2050年にかけて水需要が最も大きく変化するのは、サハラ以南のアフリカである。現在、サハラ以南のアフリカのほとんどの国が極度の水不足に陥っているわけではないが、需要は世界のどの地域よりも急速に増加している。2050年までに、サハラ以南のアフリカの水需要は163%増加すると予想されている。それに続いて、南米は43%の増加が予想されている。水需要の増加は、人口増加や農業などの産業による需要増、持続不可能な水利用政策やインフラへの投資不足など、さまざまな要因に起因している。

◆2050年までにさらに10億人が極度の水不足に
 たとえ世界の気温上昇が2100年まで1.3度から2.4度に抑えられるという楽観的なシナリオであっても、2050年までにさらに10億人が極度の水ストレス下で暮らすことになると予想されている。特に中東と北アフリカでは、2050年までに人口の100%が極めて高い水ストレス下で暮らすことになる。これは消費者や水に依存する産業だけでなく、政治の安定にとっても問題になる。たとえばイランでは、数十年にわたる不適切な水管理と持続不可能な農業用水利用によって、抗議行動がすでに起きている。

 水ストレスは、当局による介入によって、水危機に発展するのを阻止することが可能だ。シンガポールとアメリカのラスベガスは、水不足の状況下でも繁栄することができたと報告書は指摘する。シンガポールやラスベガスでは、海水淡水化や廃水処理・再利用などの技術を使って水を節約している。

Text by 中沢弘子