海水温上昇でフロリダのサンゴ礁が白化、未曾有の危機に 専門家指摘

Wilfredo Lee / AP Photo

 アメリカ海洋大気局(NOAA)の科学者は8月17日、今年の夏はフロリダ南東部沖のサンゴ礁がかつてないほど危険な白化現象に見舞われていることを明らかにした。気候変動による海水温の上昇が原因だという。

 科学者は、フロリダキーズ周辺の海域ではサンゴを死滅させる原因となる熱ストレスの量が2倍になっているほか、その時期が以前よりも早まっていると指摘する。さらにこの現象はやがてカリブ海にも及ぶとみており、世界規模で白化現象が起きる可能性もあるとしている。

 NOAAの大西洋海洋気象研究所で生態学を研究しているイアン・イノックス氏は「我々はこの事態を憂慮しており、ストレスを感じる。並大抵のことではない」と述べている。

 科学者によると、フロリダ沖の夏の海面水温は摂氏32度を超える水準に上昇したが、実害の程度が判明するのは来年初めになるという。

 フロリダのサンゴ礁は世界3番目の大きさを誇り、メキシコ湾にあるドライ・トートゥガスからマイアミの北約185キロに位置するセントルーシーまで約563キロの広がりを持つ。サンゴ礁の生態系があるおかげで何千種類もの海洋生物が生きられるほか、海岸浸食が防止され、スキューバダイビングやシュノーケリング、釣りといった観光産業が支えられている。

 サンゴ礁を形作っているのは小さな生物の連なりである。サンゴ礁に色がついているのは藻類が生息しているためで、サンゴはこれを餌にしている。海水温が高くなりすぎると藻類が抜け出してサンゴが白化する。すぐに死滅するわけではないが、サンゴは飢餓状態となり病気にもかかりやすくなる。

 現時点でコロンビア、コスタリカ、エルサルバドル、メキシコ、パナマの太平洋沿岸だけでなく、ベリーズ、キューバ、プエルトリコ、アメリカ領バージン諸島の大西洋沿岸でもサンゴの白化現象がみられる。海水温が上昇したために、メキシコのオアハカ州沖ではサメがいなくなった。

 NOAAサンゴ礁監視プログラムのコーディネーターを務めるデレク・マンゼロ氏は「フロリダの白化現象は氷山の一角にすぎない。その規模は警報レベルだ。深刻な熱ストレスによって何千、何万キロの範囲でサンゴ礁が白化に見舞われている」と言う。

 同氏は続けて、ある意味では好ましい話ではないが、熱帯低気圧やハリケーンが来て海水を冷やすことで白化が抑えられるのが最も望ましいかもしれないとして、「気象パターンに大きな変化がなければ、数日~数週間もすればカリブ海地域が熱ストレスを受ける」と話している。

 科学者によると、石炭や石油、天然ガスの燃焼による気候変動に加え、エルニーニョ現象(世界中で天候を変化させ、地球全体の温度を上昇させる太平洋の一部で起きる自然な温暖化)の影響もあり、世界の海水温は4月以降、過去最も高い水準に高まっている。白化が急速に進行したのは海水温が上昇した7月だった。

 フロリダキーズを形成する一連の島々では、サンゴの保護団体や政府機関、学術機関が総動員でサンゴを地上の研究施設に移す救出活動に乗り出している。

 NOAAフロリダキーズ国立海洋保護区のリサーチコーディネーター、アンディ・ブルックナー氏は「熱ストレスに強いサンゴの種類を特定し、それを使って抵抗力のあるサンゴを存続させるのが目標だ」と言う。

 同氏はサンゴの生態系が崩壊してしまう可能性はあるものの、再生の取り組みによって死滅を回避できると楽観視しており、「我々は臨界点に向かっている。再生努力の結果次第で次の段階に移行できるかが決まるだろう。だが今ならまだ間に合うのではないか」と述べている。

By MIKE SCHNEIDER Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP