米国立公園で過去最多ペースの死者 猛暑でハイキングのリスク増大

訪問者に猛暑を警告する標識(カリフォルニア州デスバレー国立公園、7月16日)|John Locher / AP Photo

◆極度の暑さで救助できず
 暑さは最も致命的な気象現象で、それによる死者数は、ハリケーンと竜巻によって毎年死亡する平均人数を合わせた2倍以上に上る。国立公園管理局によると、今年と最近の猛暑による実際の犠牲者はさらに多いかもしれない(CNN)。何百もの公園や地方や州機関と協働で死亡報告を収集し、裏付けを取る必要があるため、実態を掴むのが難しい。

 グランド・キャニオン国立公園の広報担当者のジョエル・ベアード氏は、頂上と麓の中間地点にあるトレイルで気温が35度に達すると、熱中症に対する職員の対応が急増するという(CNN)。

 年間300から350までの捜索と救助が行われているが、今年はこれまでのところ172件に達し、5月29日のメモリアルデー以降では70件になる。

 デスバレーは異常な暑さのため、デスバレー国立公園は来訪者に対して救助はできない・しないと注意を呼びかけている。同公園の広報担当者アビー・ワインズ氏は、「極度の暑さのなか、救助という肉体労働によって、スタッフを熱中症の危険にさらしたくないためです」と説明した。また、気温が高すぎるため、ドクターヘリが離陸するのに十分な揚力が得られないことも付け加えた。(CNN)

 デスバレーでは標高の低い登山口に「止まれ、猛暑危険」の赤い標識を設置し、午前10時以降はトレイルから離れ、気温が最も低い標高の高い場所でのみハイキングするよう呼びかけている。23日には最高気温約54度まで上昇すると予報された。

 国立公園には、冬の嵐や熱帯低気圧などの異常気象を除いて、気温が一定レベルまで上昇した場合、閉鎖を指示する規定や方針がないため、各公園が危険度に基づいて独自に判断することになる。アリゾナ州とネバダ州にあるミード湖国立保養地のトレイルは、暑さのために季節に応じて閉鎖される。グランドキャニオン国立公園は、少なくともトレイルの閉鎖を検討している。

◆さらなる温暖化で国立公園でのリスク増大
 アメリカの気候変動関連の非営利団体「クライメート・セントラル」が公表した最近の報告書によると、人類が燃やす化石燃料によって引き起される気候の危機は、持続的で危険な暑さを今より5倍以上も生み出す可能性があるという。

 2018年の研究によると、アメリカの417の国立公園の気温は、気候危機の影響により、過去100年の間にほかの地域の2倍の割合で上昇している。

 カリフォルニア大学バークレー校の気象学者のパトリック・ゴンザレス氏は、「南西部とアラスカの国立公園が、人が引き起こした気候変動による最も深刻な影響を受け、顕著な温暖化を経験した」と言う。「自動車や発電所、森林伐採による温室効果ガス排出といった人為的な要因が、我々の国立公園を破壊している。温室効果ガス排出が続けば、国立公園に対する暑さによるリスクやダメージはますます高まるだろう」と指摘した。(CNN)

Text by 中沢弘子