グレタ・トゥンベリらが非難する「緑の植民地主義」 ノルウェーの風力発電所めぐり

ノルウェー・オスロで抗議するグレタ・トゥンベリら環境活動家(3月2日)|Javad Parsa / NTB Scanpix via AP

◆「違法」とされた風力タービン
 ノルウェーの最高裁判所は2021年10月、風力タービンの建設は国連の条約によって保護されているサーミ文化の権利を侵害するものであり、環境省によるライセンス契約は無効であるという判断を下した。しかし、この決定によって風力タービンが撤去されることはなく、判断から500日以上経った現在も風力発電所は稼働している状況だ。

 背景にはノルウェーのエネルギー政策のシフトがある。ノルウェーは世界第11位の産油国だが、グリーンエネルギー化に向けて、投資を拡大してきた。風力発電の稼働能力は2018年の3倍、4.8ギガワットまで拡大したが、石油に比べて多くの土地が必要となる。 サーミが生活するノルウェー西部のフォセン地方には151基の風力タービンが設置されている。151基を運営するのはノルウェーの発電所2社だが、同社の所有者にはノルウェー、ドイツ、スイスのインフラ会社が名を連ねている

 違法とされた風力タービンだが、環境省はいまだ具体的な対応方法を決定していないようで、サーミ側との折り合いもついていない。環境省はいくつかの風力タービンや道路の撤去といった対応を検討しているようだが、サーミ側は風力タービン撤去を主張。最高裁の判断から500日以上経過しているが、話し合いは難航しているようだ。先住民の土地や権利を無視した気候変動対策を、「グリーン・コロニアリズム(緑の植民地主義)」だとする主張もある。さらには、先住民の存在が、環境保護の名目に都合よく使われることがある一方で、実際には権利を侵害するというやり方に対しての批判の声もある。

 見せかけだけの環境保護・気候変動対策としてのグリーンウォッシュにも注意すべきだが、環境投資や環境ビジネス推進の背後にあるかもしれない「グリーン・コロニアリズム」も、無視してはならない視点だ。

Text by MAKI NAKATA