オゾン層40年以内に回復 破壊物質99%削減 国連報告書

南極のオゾン層に穴ができれいることを示すNASAの画像(2022年10月時点)|NASA via AP

 冷蔵庫の冷媒やスプレーの噴射剤に使われる化合物「フロン」などの化学物質について、地球を取り巻くオゾン層を破壊し、地表に到達する人体に有害な紫外線量の増加を招くとして、国連は1987年、この使用を禁止するモントリオール議定書を採択し、オゾン層破壊を防ぐ取り組みを進めている。今回、その取り組みを評価する科学アセスメントが発表された。オゾン層の破壊は食い止められたのか、その現状とは。

◆化学物質99%削減 オゾン層40年以内に回復の見通し
 国連環境計画(UNEP)などは9日、オゾン層を破壊する大気中の化学物質の国際的な段階的削減計画によって、オゾン層が40年以内に回復する見通しがあると発表した。国連の「オゾン層破壊物質に関するモントリオール議定書」のもと設置された科学評価パネルが4年ごとに更新する最新の評価報告書によると、オゾン層破壊物質の約99%が段階的に削減されたことで、上部成層圏のオゾン層が著しく回復し、有害な紫外線の人体への曝露量が減少した。1989年に発効した同議定書は、オゾン層を破壊するフロンなどの化学物質96種の生産・使用を禁止している。

◆南極2066年、北極2045年に回復の目途
 オゾン層が破壊されると、地球の地表へ到達する紫外線の照射量が増加し、動植物の成長に被害を及ぼすと同時に、植物による大気中の二酸化炭素の吸収を妨げ、気候変動に影響を及ぼす。

 今回の報告書では、オゾン層を破壊する化学物質CFC-11が中国北東部の工場から近年不正に排出されていたが、2018年以降、同排出量が減少したことで、オゾン層が回復基調にある。

 UNEPのインガー・アンダーセン事務局長は、この結果、「毎年200万人の人々を皮膚がんから救っている」と指摘する(AP、1/10)。

Text by 中沢弘子