バケツ1つでOK 日本発の「ぼかし」で堆肥作りをスピードアップ

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 健康な植物を育てるカギは健康な土にあり、土の質を高めるには堆肥を混ぜ込むことが一番だということはよく知られているが、堆肥を作るには丸一年もの期間を要することもある。

 「ぼかし」は、堆肥を作る上でこの待ち時間を短縮できる方法だ。元々は1980年代に日本で開発され、有益な微生物を含んだ資材を用いたものである。

 堆肥は、重粘土質の土壌の排水を良くし、土の保水力を高める。また、堆肥からは養分と微生物がにじみ出るので植物に栄養を与え、成長力の向上につながる。これにより普通肥料の使用量を減らしたり、必要性をなくしたりもできる。

 自家製の堆肥を作ろうというのは、必ず価値のある試みではあるものの、時間と忍耐が要求される。また、材料が有機分解(酸素の力で分解)するときに必要な酸素がまんべんなく行き渡るように、定期的に材料を揺すったりひっくり返したりしなければならない。

 ぼかしの場合は漬物を作るときのように、酸素ではなく発酵により材料を嫌気的に分解する。これにより、待ち時間を早ければ10日間に短縮できる上、従来の堆肥よりも栄養価の高いものが出来上がる。

 作業は屋内の小さなスペースで行える。用意するものは、吐水口と密閉できる蓋のついた5ガロン(約19リットル)のバケツと、発酵を促すための資材1袋のみだ。ぼかしの資材としては、小麦のふすまや胚芽、おがくずなどを使うのが一般的である。まずはキットを購入するか、調べて手作りすることも可能だ。

 生ごみを2インチ(約5センチ)ずつの層ができるようバケツに入れていく。一つ層ができるたびに上から資材を軽くひと握り分振りかけ、作業時以外は蓋を毎回しっかりと密閉しておく。酸素に触れる部分をさらに減らすためには、層の上に板やラップを被せてから容器を密閉するといいだろう。

 バケツがいっぱいになったら水分が出てくるので、2~3日おきに吐水口から排出する。この「堆肥茶」ひとさじを1クォート(約1リットル)の水で薄めると栄養満点の液剤ができるので、畑や鉢植えの土に混ぜ込もう。植物の成長力が高まり、収穫量も増加する。液剤は枝葉にかからないよう注意し、抽出後1日程度でその都度使い切ること。

 食肉や残飯は、通常の堆肥には厳禁とされているが、ぼかしのバケツになら入れても構わない。これまでの堆肥作りでは、温度が不十分なため有害なバクテリアや寄生虫を殺せなかったが、ぼかしの場合は微生物の効果を活用するので、動物性食品が持つ病原菌をすべて破壊してしまえる。

 バケツに酸素が入りすぎないようにするため、材料は素早く、少量ずつ加える。出来具合いをのぞき見たくなるが、同じ理由から材料を入れるとき以外は我慢が必要だ。

 バケツはしっかり密閉し、部屋に匂いが漏れ出ないようにする。蓋を開けたときには、甘酸っぱい匂いを感じるだろう。この場合はとくに問題はない。しかし悪臭がしたら、それは何か異変が生じている合図だ。卵の腐ったような匂いがしたり、バケツの中に黒カビを確認したら(白カビなら問題ない)、資材を追加してみよう。2~3日のうちに状況が良くならなければ、今回の分は廃棄し、バケツを洗浄、消毒して初めからやり直しだ。

 念を押すようだが早ければ10日ばかりで、発酵が完了する。完成したバイオマスは、この段階ではまだ元の材料と変わらないように見えるが、ここから一気に分解が進むので、新しい畝(うね)に溝を作り、少なくとも植えつけの2週間前には埋め込んでおく。上からしっかりと土を被せることを忘れずに。

 ぼかし肥料は、従来の堆肥、またはミミズ堆肥のビンや山の中央に加えることもでき(元の内容物とよく混ぜ合わせること)、そこでさらに分解が進む。

 従来の堆肥に加えるためだけの「プレ堆肥」を作るというのがどういうことか、わかりにくいという人もいるだろう。その場合には、完熟堆肥完成までの特急列車に乗れるようなものだと考えてほしい。ぼかしで分解した材料を混ぜ込むことで、数ヶ月もの時間を短縮できるのだ。

 従来の堆肥がない場合、畑にぼかし肥料用の場所を設け、そこに穴を掘って数回分を埋めておけば終了だ。2週間後、必要な分だけ掘り起こせば、普通の堆肥と同じように使用できる。

 もうひとつの方法としては、植物に沿って十分な距離を保ちながら溝を作り、ぼかし肥料を埋め込むことも可能だ。このとき、発酵したぼかし肥料の酸で根が焼けてしまうことを防ぐため、根に直接触れないよう注意が必要だ。同じ理由から、従来の方法で堆肥化を進めたもの以外の追肥や過剰投入は控えること。

By JESSICA DAMIANO Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

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