インド:カップ、ストロー、スプーンなど使い捨てプラスチックを禁止

Mahesh Kumar A. / AP Photo

 人口約14億人のインドでは7月1日、国内で日常的に使用されている使い捨てプラスチック製品を段階的に廃止する連邦計画の一環として、一部の使い捨て製品を禁止する規則が施行された。

 規制の第一段階として、有用性は高くないもののゴミとして廃棄される可能性がある19のプラスチック製品を対象として、その生産、輸入、保管、流通、販売を禁止した。対象製品はプラスチック製のカップやストロー、アイス棒など多岐にわたる。また、一部の使い捨てレジ袋も廃止され、厚手の袋に切り替えとなる。

 ミネラルウォーターや炭酸飲料のボトル、菓子袋などほかのプラスチック製品は禁止の対象にはならない。だが政府はメーカーに対し、これらの製品の使用後にリサイクルや廃棄に責任を持つよう要請し、そのための期限を定めた。

 プラスチックメーカーはインフレや失業者増加の可能性を指摘し、規則の延期を政府に要請していた。ところが、インドのヤダヴ環境相はニューデリーで行われた記者会見の場で、1年にわたって禁止措置の実施に向けた準備がされていたとして「もはや、準備時間は終了した」と述べている。

 インドでプラスチック製品の禁止が検討されたのは、今回が初めてではない。だが以前は特定の地域を対象としており、成果もまちまちだった。権利擁護団体「プラスチックからの脱却」でアジア太平洋コーディネーターを務めるサティアルパ・シェカール氏は「プラスチックの使用だけでなく、生産や輸入も含め全国的な禁止がなされたのは決定的な前進だった」と述べている。

 世界的にみると大半のプラスチックはリサイクルされず、数百万トンものプラスチックが世界の海洋を汚染し、野生生物の生命を脅かし、飲料水に混入している。マイクロプラスチックと呼ばれる、プラスチックが分解された小さな破片がもたらすリスクについては、科学者たちがいまなお検証しているところだ。インド中央公害管理局によると、2020年には国内で410万トン超のプラスチック廃棄物が発生した。

 人口が急増している都市や村では廃棄物の管理システムが近代化されていないため、廃棄物の多くはリサイクルされず、ただ環境を汚染している。イギリスのデータベース「アワー・ワールド・イン・データ」によると、2019年にインドで廃棄された、またはリサイクルされなかったプラスチック廃棄物は約1300万トンで、世界最大の規模だった。

 プラスチックを作る過程で大気中に温室効果ガスが放出される。インドの工場では、毎年24万3000トン超の使い捨てプラスチックが製造されている。つまり、インドが8年で経済活動における炭素強度を45%削減するという目標を達成するためには、プラスチック製造とそれにともなう廃棄物の削減がきわめて重要となる。

 最近の研究で、プラスチック加工に8000以上の化学添加物が使用されていることが判明した。なかには二酸化炭素と比較して、1000倍もの温室効果ガスが含まれている物質もあった。使い捨て包装材、プラスチック樹脂、発泡プラスチック断熱材、ボトルや容器など、さまざまなプラ製品が世界の温室効果ガス排出につながっている。

 大半のプラスチックはリサイクルされずに日用雑貨などへダウングレード(格下げ)される。そのほか、焼却されることもあれば、ケミカルリサイクルとして知られているプロセスで廃棄物発電所の燃料として使用されることもある。プラスチックはスクラップ(金属くず)と比較すると燃料として3〜4倍の価値がある一方、リサイクル工程で大気中に多くの二酸化炭素を放出するため、地球温暖化に拍車をかけてしまう。

 シェカール氏は「プラスチック危機の大きさを考えると、今回の規制はあまりにも小粒だ。範囲も対象も狭すぎる」と話す。

 ニューデリーで廃棄物管理に注力している権利擁護団体「トクシック・リンク」のディレクター、ラビ・アガワル氏によると、規制は「幸先の良いスタート」を切ったが、成功するかどうかは実施方法にかかっているという。規則の施行は、各州や市当局の手に委ねられる。

 インド当局は、竹製スプーン、オオバコ製トレイ、木製アイス棒など代替品の有無を考慮して禁止製品が特定されたとしている。だが、規制導入の数日前、多くの業者は戸惑いをみせていた。
 
 モティ・ラーマン氏(40)はニューデリーで野菜を売っている。先月28日には、販売カートから新鮮な夏野菜を吟味して選んだ顧客のために、商品をビニール袋に詰めていた。ラーマン氏は、規制には反対しないが、手軽に入手できて同等の費用効率の代替品がない状態でビニール袋が禁止されると仕事に影響が出るとして「結局、プラスチックは何にでも使われているから」と話す。

By ANIRUDDHA GHOSAL AP Science Writer
Translated by Conyac

Text by AP