欧州、石炭火力に回帰 ロシアの天然ガスに頼れず、脱炭素遠のく

ドイツ西部ゲルゼンキルヒェンの石炭火力発電所(2021年)|Martin Meissner / AP Photo

 欧州の複数の国々が古い火力発電所を再稼働させる準備に入った。ロシアが欧州向けの天然ガス供給を減らしたことを受けたものだ。石炭回帰の動きは、欧州の各国政府が望む気候変動への取り組みに逆行するものだが、冬のエネルギー不足も心配されており、苦渋の決断となっている。

◆意図的にガス供給減? エネルギーは武器
 昨年末に発足したドイツの新連立政権は、2030年までに脱石炭を目指し、気候変動対策をアジェンダの中心に据えた。その野心的な計画のなかには、2045年までに温室効果ガスの排出をゼロにすることも含まれていた。しかしウクライナ侵攻で対立する欧州各国への天然ガス供給をロシアが絞ってきたことから、ドイツの計画は揺らいでいるとワシントン・ポスト紙(WP)は述べる。ドイツ経済省はガス供給削減を受け、不特定多数の石炭火力発電所を再稼働させると発表した。

 ロシア国営エネルギー大手のガスプロムは、天然ガスの供給制限はドイツまで伸びるパイプライン「ノルドストリーム1」の技術的な問題だとしている。しかしドイツのハーベック経済相は政治的な動機によるものだとし、ガス供給の削減は「エネルギーを武器にした攻撃」とロシアを批判している(WP)。

 石炭は排出量の点で最も炭素集約度の高い化石燃料であり、再エネ移行において最も重要な転換対象とされているため、石炭火力の再稼働はつらい決断だとハーベック氏は述べた。しかし「状況は深刻だ」とし、石炭で補うことで夏と秋にガスの消費量を減らし、冬に備えてガスを蓄えておく必要があると主張している。(CNBC

Text by 山川 真智子