大気中のCO2を回収して石に 世界最大プラントがアイスランドで稼働開始
世界の国々が、2050年までに温室効果ガス(主としてCO2)を「実質ゼロ(ネットゼロ)」にする目標を掲げている。2020年秋には、日本政府も2050年にカーボンニュートラルを目指すと宣言した。将来的に温室効果ガスを完全に排出ゼロにすることは難しいため、実質ゼロ(CO2の排出量と吸収量を同じにする)といった形での削減を目指している。
具体的には化石燃料消費の減少、再生可能エネルギーの増加、建築物の省エネ推進、プラスチックのリサイクル、森林面積の増加といった対策が進められているが、大気中に存在するCO2を直接回収するという革新的な方法も存在する。「ダイレクト・エアー・キャプチャー(DAC)」と呼ばれる新技術だ。
◆19のDACプラントが世界で稼働中
DACによって回収されたCO2はH2(水素)と合成して製造される「合成燃料」の材料にしたり、農作物の成長促進に使ったり(濃縮したCO2を与えることにより収穫時期が早くなる)、炭酸飲料製造に使用する。経済産業省も、将来的にはDAC技術によって回収されたCO2の再利用を想定していると述べている。
日本でも最近、DACについての記事をよく見かけるようになったが、欧米では10年以上前から実用化を目指して研究が続けられてきた。世界初の実用化は2017年春だ。スイス・チューリヒのごみ処理施設KEZO屋上に設置されて稼働を開始したDACプラントだ。箱型装置18モジュールで、1年に約900トンのCO2を回収する(参考:日本の1人当たりCO2排出量は9~10トン)。チューリヒのクライムワークス社が開発した。
国際エネルギー機関(IEA)によると、現在、チューリヒも含めて19のDAC小規模プラントがアメリカ、カナダ、ヨーロッパで稼働し、CO2を回収している。その全回収量はおよそ1万トンとまだ少ないが、これからDACプラントを増設し、2030年までに年間8千500万トン以上、そして2050年までに9億8千万トンの回収を目指しているという。