仏、メンタルヘルスセラピー助成へ 改めて重要視される心の健康

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 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は9月、カウンセリング・セラピーにかかるコストの一部を政府が負担するという方針を発表。とくにパンデミック開始以降、メンタルヘルスに関する課題はより多くの人が向き合う課題となり、その課題対応への関心も高まりつつある。フランスやほかのOECD加盟国の対応状況とは。

◆フランスの新施策
 9月28日にパリで開かれたメンタルヘルスと精神医学に関する全国会議の場における演説にて、マクロン大統領はメンタルヘルスに関する新たな施策方針を発表した。その一つが、2022年以降、カウンセリング・セラピーにかかる費用の一部を政府が負担するというもの。具体的には、対象となる3歳以上のフランス国民が、医師の処方を条件に、初診のセラピーに対しては40ユーロ、それ以降のセッションに対しては30ユーロの公的補助を受けることができるというものだ。この金額は、50〜70ユーロという平均的なセッション費用よりは低い金額に設定されている。この新たな公的補助は、財政的な制約からセラピーを受けられない患者や、生計を立てられていない零細メンタルヘルスケア従事者のサポートを目的とした施策だ。

 セラピーに関する公的補助は、2022年に開始されるメンタル・ヘルスに関する新たなイニシアティブの一部としての政策だ。マクロン大統領は、国立のメンタルヘルス・センターを設立し、800の新たな雇用機会を創出するという施策も発表。パンデミック開始以降、定期的に実施されている2000人を対象にしたフランスの統計調査によると、その10%がパンデミック開始以降の1年間で自殺を考えたと回答した。さらに、回答者の15%がうつの症状を抱えており、23%が不安を抱えているという結果。この数字はパンデミック前と比較して、それぞれ5ポイント、10ポイントずつ増加した。

 フランスでは、3歳から17歳および大学生を対象とした、セラピーの公的補助のプログラムが今年初めより開始している。しかし、手続きの煩雑さなどから、多くの人が利用するには至っていないという現状があるようだ。「メンタルヘルスは重要課題であるが、フランスでは十分な対応に至っていない」とマクロン大統領は述べた

Text by MAKI NAKATA