「目を覚まして」 環境活動家ナカテ氏、世界の指導者へ訴え
ウガンダの環境活動家バネッサ・ナカテさんは、世界各国の指導者に対し、「目を覚ます」よう訴え、気候変動が危機的状況にあることを認識するよう強く求めた。10月7日、インターネット上に配信された「デズモンド・ツツ国際平和講演会」のなかで、ナカテさんは、貧困、飢餓、災害、紛争、また女性や子供に対する暴力、これらが気候変動に関連する問題であると示した。
グレタ・トゥーンベリさんをはじめとする、若い世代の活動家とともに抗議運動を行ってきたナカテさんは、「私たちがいま直面している脅威に目を向けるよう」、指導者らに迫った。
講演会の冒頭に際し、ツツ・レガシー財団のニクラス・シェルストレーム・マツィーケ理事は、次のように述べている。「我々が決断を先延ばしにすることで不平等が蔓延し、不正が容認されています。貴重な生物多様性の破壊はさらに進んでいます。そして、地球上でもっとも裕福な国が、気候変動に関する国際的な取り決めから離脱し、地球規模で拡大する新型コロナウイルス感染流行のさなか、国際保健機関(WHO)への資金拠出を停止する事態に、成す術もありません」
マツィーケ氏は、ドナルド・トランプ大統領による政策に言及している。2017年、トランプ大統領は、気候変動に関して大きな意義をもつ「パリ協定」からの離脱を発表した。さらに、新型コロナウイルス感染流行により現在までに世界で100万人を超える死者が出ているが、アメリカは今年WHOへの資金拠出を取りやめると決定した。
トゥーンベリさんは、ナカテさんとともにスピーチを行う予定であったが、中止が決定された。理由は明かされていない。代わりに、「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」の前理事長であり、2015年のパリ協定締結に大きく貢献したクリスティアナ・フィゲレス氏がスピーチを行った。
南アフリカ出身のノーベル平和賞受賞者、デスモンド・ムピロ・ツツ氏は、自身の誕生日にあわせて毎年平和講演を行っている。10月7日には89歳を迎えた。新型コロナウイルス流行の影響により、今年は事前に収録された講演が配信され、同氏は「地球規模での気候の公平性」を訴えた。
「地球の環境破壊は現代が抱える人権の問題です」と、ツツ氏は話す。元ケープタウン大主教である同氏は、1994年に廃止された南アフリカの人種隔離政策、アパルトヘイトと戦ったことでノーベル賞を受賞した。
講演会では、地球温暖化を招く化石燃料の燃焼を減らし、温室効果ガスの排出を削減するよう、講演者らが世界に向けて呼びかけた。
パリ協定では、産業革命前からの世界の気温上昇を2℃未満に抑制することが大きな目標であるが、それを超えて上昇する方向に世界は向かっていると科学者は指摘する。
ナカテさんの講演では、アフリカ大陸に重点が置かれた。気候変動への加担が最も少ないにもかかわらず、それによりアフリカが被る影響は最も深刻だという。
洪水や干ばつによって穀物に壊滅的被害がもたらされ、数百万人が飢餓状態にある一方で、洪水によってマラリアやコレラなどの致死的な病気が蔓延していると、ナカテさんは話す。そして、資源が枯渇することで紛争が引き起こされる可能性もあるという。
「気候変動は悪夢のようなもので、私たちの生活のあらゆる領域に影響を及ぼします。この危機に目を向けずして、どうして貧困を根絶することができるのでしょう。気候変動により、数百万もの人々に食料がまったく行き渡らない状態で、飢餓をゼロにすることができるのでしょうか。この問題への対応がなされないままでは、災害や難題、苦しみなど……終わりはないでしょう」と、ナカテさんは話す。
「安全地帯から出て、私たちが直面している脅威に目を向けてください。そして、何らかの対応を講じてください。これは生死に関わる問題なのです」と、ナカテさんは指導者らに訴えた。
南アフリカ出身の気候変動活動家であるアヤカ・メリサファさんや、若い世代の活動を称賛するアル・ゴア元アメリカ副大統領からも、メッセージが寄せられた。
「トップが決断することで変化が起きることもありますが、大きな変化については多くの場合、草の根レベルの運動から始まることが多いのです。対策を求める声が大きく、根強く、そして揺るぎないものであれば、政治的指導者もその問題に注目し始めるのです」と、ゴア氏は話す。
世界は、気候や環境をめぐる「決定的な10年間」へ突入していると、フィゲレス氏は警鐘を鳴らす。この先数百年におよぶ生活の質が、この10年で決定づけられる可能性もある。
「誇張しているかのように聞こえるかもしれませんが、そうではないのです」と、フィゲレス氏は述べる。
By GERALD IMRAY Associated Press
Translated by Mana Ishizuki