永久凍土解け、火事増加……シベリア異常気象、38度記録も

Olga Burtseva via AP

◆消える永久凍土、増える山火事
 シベリアの住人は、日光浴やいつもより早い植物の開花や収穫を楽しんでいるが、気温変動の影響は、環境には懸念すべき結果になっているとWEFは述べる。その一つが、気温上昇による永久凍土の融解だ。実は5月末に、中央シベリア高原の北西部にあるノリリスク近郊にある燃料タンクからディーゼル油が河川などに流出する事故が起こり、大規模な環境汚染を起こしている。この事故の原因が、タンクの土台になっていた永久凍土が解けたためではないかと見られている。2050年までに、北極圏に作られたパイプライン、道路、ビルやタンクなどのインフラの多くが、永久凍土が溶けることで崩壊する可能性があると科学者たちは予測している(ナショナルジオグラフィック)。

 異常な高温は、人がたどり着くのも大変な遠隔地での火災の急増にもつながっており、この調子だと2020年の北極圏地域の森林火災は最悪となりそうだ。衛星画像では、火災から出た煙が数百キロにわたって広がっていることがわかり、二酸化炭素排出量は6月1日から21日の間だけで、すでに昨年の6月を上回っている。昨年もシベリアは大森林火災に見舞われているが、今年はさらに早く始まり、さらに激しく燃えているとユーロ・ニュースは伝えている。

◆コロナで重要度低下? 気候変動対策は不可避
 実は高温に見舞われているのはシベリアだけではない。北東カナダやスカンジナビアなどでも非常に暖かい晩春と初夏を迎えており、最初の大規模火災が広がりつつある。

 世界でコロナウイルスのパンデミックが大きな懸念材料となっているいま、気候変動の問題は各国政府の重要課題リストの下方に押しやられてしまったとWEFは述べる。コロナのロックダウンで、2020年最初の数ヶ月は世界の温室効果ガス排出量は減ったが、一部地域ではすでに上昇しつつあるという。過去において景気が下降すると、各国は製造業や建設業などの汚染を広げる産業で景気浮揚を図ってきた。しかしロックダウン緩和後に各国政府が目指すべきは、クリーンで環境にやさしい景気回復だとWEFは主張している。

Text by 山川 真智子