「エアコン嫌い」欧州も限界……熱波で需要増 エアコン増えると悪循環にも?

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◆温暖化でエアコン需要拡大、さらなる悪循環も
 ブルームバーグによれば、世界でもっともエアコンの数が多いのは中国で、全体の35%を占める。約半数の家庭がエアコンを保有しているということだ。続いてアメリカ(23%)、日本(9%)、EU(6%)、韓国(4%)となっている。世帯普及率でみると、WPによればアメリカでは90%。日本でも内閣府の消費動向調査で、90%を超えている。欧州での普及率は5%未満だが、国際エネルギー機関(IEA)では、熱波の到来はより頻繁になると予測しており、今後20年間でエアコンの数は2倍になると見ている。

 エアコンの需要増加は欧州だけにとどまらない。世界のエアコンの数は、人口の増加、収入の増加、エアコン機器の価格の下落、都市化などの影響で、今世紀半ばには、現在の16億台から56億台に増えるだろうとIEAは指摘している。エアコン製造会社は恩恵を受けるが、地球温暖化を促進する可能性が高いとブルームバーグは指摘している。

 二酸化炭素の排出は世界で増え続けているが、温暖化で気温が上昇すればエアコンの需要が高まり、その結果さらに電力が必要となる。そのためさらに二酸化炭素の排出量が増え、さらなる気温上昇を呼ぶという悪循環が生じる。また、エアコンが増えれば、都市部のヒートアイランド現象が悪化してしまうことも指摘されている。ブルームバーグは、エアコンのための電気需要は、2050年までに現在の140%以上増加するだろうとしている。

◆求められる技術革新 温暖化対応必須
 ブルームバーグによれば、エアコンなどの建物に使うエネルギーは世界のエネルギー消費量の5分の1を占める。電力を自然エネルギーで作り出すことは可能だが、日没後は安定した発電が期待できないため化石燃料に頼ることになるとし、効率のよいエアコンシステムの開発が急務だとしている。灯りの世界に革命をもたらしたLEDのように、エアコンの世界にもイノベーションが必要だということだ。

 省エネに有効と注目されているのが、エアコンの必要性を最小化する建物だ。その一例として上げられているのが、「パッシブハウス」という30年前にドイツで生まれた建築だ。断熱性や気密性に優れ、冷暖房の必要がほとんどないとされている。英タイムズ紙によれば、世界中で3万戸がすでに建設されており、このようなグリーンな建築物はアメリカでブームになっているという。

 とはいえ欧州では熱波は今後も起こりやすいとされ、やはり当面は既存のエアコンの導入が必要となりそうだ。欧州ではもともと夏でも涼しいうえに、エアコンは体に良くないとされ、エアコン嫌いの人が多いとされてきた。しかし繰り返す熱波を受けて、人々の考えも変わりつつあるとWPは述べている。2003年の熱波で、フランスでは1万5000人が亡くなっており、悲劇が繰り返されないことを祈りたい。

Text by 山川 真智子