弱者を知る有料ツアー、スイスで話題 ホームレス経験者らがガイドに
◆2時間ツアーで弱者たちの生活を垣間見る
とはいえ、これらの場所も少しずつ世間の関心を集めている。バーゼル(2013年より)、チューリヒ(2014年より)、ベルン(2018年より)の3都市に、いくつかを訪問できる有料ツアーがあるのだ。人道支援団体のスープリーズ協会がほぼ毎日開催していて、各都市の中央駅付近を2時間歩いて回る。「ホームレスの生活を知る」「生活保護を受給している人たちの様子」「虐待や暴力を受けた女性の保護と自立」などテーマ別のルートになっていて、好きなツアーをネット予約できる。
参加は14歳以上を薦めており、大人の料金はチューリヒでは30フラン(約3,300円)、ほかの2都市は25フラン(約2,700円)。どのツアーも最大20人で、5人で催行となる。また団体でも申し込めて、学校の社会見学としても利用されている。
各ツアーのガイドは貧困層の人が行っている。トレーニングを受けていて、この仕事で対価を得ている。
ツアーには、「アルコールや薬物の問題を抱える人たち」というテーマもある。チューリヒでは、アルコールや睡眠薬や鎮静剤を常用する人やその家族のためのサポート施設「ZFA」、アルコール、薬物、賭け事(スイスには全国に21のカジノがある)をやめたい人をサポートする「arud」、薬物依存の人たちを支援するチューリヒ市の施設などを回るツアーが水曜日に2回開催中だ。
こうした社会的弱者たちの存在を隠さず、多くの人たちに知ってもらおうという試みは興味深い。参加費が支援につながり一石二鳥といえる。
◆雑誌販売で収入を得る
なお、スープリーズ協会では、プロのジャーナリストたちが執筆する雑誌『スープリーズ(Surprise)』を隔週で発行していて、貧困層の人たちが各地(スイスのドイツ語圏)の路上やショッピングセンター内などで販売している。販売場所は団体がオーガナイズして、決められた場所をあてがってもらう。販売価格は1冊6フラン(約650円)で、約半分の2.7フラン(約300円)が自分の収入になる。売る時間は自分で決められる。2017年は400人以上の販売員が44万部を売り、130万フラン(約1億4200万円)が彼らの収入になった。
雑誌では、各ツアーのガイドたち、雑誌販売員たち、同協会がオーガナイズしているサッカーやコーラスに参加している人たちの様子も定期的にレポートしている。
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