ドイツ、2038年までに石炭火力発電を廃止へ 現在電力の3分の1超を依存
ドイツ政府の任命を受けて先駆的な活動を進めている石炭委員会は、気候変動抑制に向けた取り組みの一環として、遅くとも2038年までには石炭の燃焼による発電を廃止すべきだと提言している。
他の石炭依存国からの注目が集まるなか、数ヶ月にわたり話し合いを続けた末、石炭委員会は1月26日に今回の提言を取りまとめた。
ローラント・ポッファラ委員長は、ベルリンで報道陣に対し、「やっとここまでくることができた。これは歴史的な取り組みだ」と述べている。
ドイツは石炭を燃焼する火力発電で、国の電力の3分の1超をまかなっているが、これにより地球温暖化の原因となる温室効果ガスを大量に排出している。
炭鉱地域、公共事業会社、科学者、環境問題専門家から28人の代表を集めた石炭委員会は、2032年に一旦レビューを行った後、2035年を期限とした石炭全廃へと踏み切ることを提案している。
今回の取り組みにより被害や影響を受ける地域に対する経済支援や、産業や消費者が負担する電気料金の高騰を防ぐためには、数十億の政府資金が必要だと見込まれている。委員会によると、エネルギーの転換にはまた、全国の送電網を全面的に見直し、新たに体制を整える大がかりな対策が必要だという。
正式な決定となるには、今後政府の承認を受ける必要がある。
ポツダム気候影響研究所のヨハン・ロックストローム所長は、「鉱業とテクノロジーを基盤とし、世界第4位の経済大国となったドイツが、脱石炭という歴史的な決定を下すまでの道のりを、世界各国が注目している。これは史上最速のエネルギー転換として認められ、全世界に広まるだろう」と述べている。
今回の計画は、ドイツの石炭火力発電所を段階的に廃止し、温室効果ガスの排出量を削減するというものだ。現在、ドイツの石炭火力発電所は、ヨーロッパ最大の二酸化炭素排出源となっている。
ドイツ通信社(DPA)によると、どの発電所から閉鎖すべきかという点について、石炭委員会は、政府が発電所の担当者と交渉して決める必要があるとして、議論を先送りしている。
同委員会によると、政府は、石炭の炭鉱事業廃止により影響を受ける地域に、最大5,000件の雇用を創出するよう支援しなければならない。ノルトライン=ヴェストファーレン州、ブランデンブルク州、ザクセン=アンハルト州、ザクセン州における該当地域には、政府から今後20年間で総額400億ユーロ(約5兆80億円)の補助金を支給する必要がある。
ポッファラ氏は、「石炭炭鉱地域にハード面での政策を進めることで、新たな雇用を創出できるだろう。今後も安全で低価格な電力を提供できるはずだし、今回の合意がドイツの持続可能な気候保全につながると思う」と述べている。
ドイツは、化石燃料の代替として太陽エネルギーや風力といった再生可能資源を使用する「エネルギーの転換政策」に熱心に取り組んでいる。昨年、再生可能資源が初めて石炭を上回り、エネルギー転換に向け大きな進歩をみせてきたものの、発電資源から石炭を完全に撤廃するというのは極めて困難だ。
石炭を減らした分は、再生可能資源による発電量を増やして補わなければならない。少なくとも当面の間は、温室効果ガスの排出量が石炭の約半分の、天然ガスの燃焼量を増やすことになるだろう。
2030年までにすべての石炭火力発電所を閉鎖すべきだと訴える、国際環境NGOのグリーンピースは、「ついにドイツが脱石炭までの具体的なスケジュールを決めた」と歓迎しながらも、今回の対策では、熱意もスピード感も不十分だとしている。
グリーンピースの責任者、マーティン・カイザー氏は「スピードが足りない。2038年までに脱石炭を達成するというだけでは、まだだめだ」と言う。
昨年、反石炭運動が勃発するきっかけともなった原生林、ドイツ西部のハンバッハ森林を保全すべきだとする石炭委員会の提言は、国内の環境団体から支持を集めている。
電力会社エル・ヴェー・エー(RWE)は、亜炭の露天掘り鉱山を拡張すべくハンバッハ森林の半分を伐採しようとしたが、反対派が伐採作業を阻止するため、数ヶ月にわたり森に野宿するという事態となった。
公共放送局の第2ドイツテレビ(ZDF)が実施した世論調査の結果、ドイツ国民の73パーセントが、脱石炭のいち早い達成が非常に重要だと回答している。1月22~24日に1,285人を対象とした行った電話調査でも、3パーセント程度の誤差があるのみだった。
By KIRSTEN GRIESHABER, Associated Press
Translated by t.sato via Conyac