新車販売の3割がEV、ノルウェーでブーム 政府が積極支援

Lise Aserud / NTB Scanpix via AP

 静かな革命により、ノルウェーの車事情に変化が起きている。

 人口530万人の豊かな欧州国家、ノルウェー。この国のフィヨルドに面した道路や山道を見ると、あちこちで不気味なほど静かな自動車が走っている。ヨーロッパ全体では新車販売台数の2%が電気自動車で、アメリカでは1%から2%という水準だが、ここノルウェーでは新車の30%がガソリンタンクの代わりにプラグインケーブルを搭載している。

 世界最大の自動車市場である中国を含め、世界各国が気候変動対策のため電気自動車の消費促進をはかっているが、ノルウェーの成功には政府の推進力が大きく関わっている。電気自動車の購入者向けには大規模な補助金や特典制度が敷かれており(今後、段階的に廃止予定)、当面は従来型のガソリン車と比べて消費者にとって魅力的なのだ。

                                                                                                                 

「常に普通車より、排気ガスを出さない車を安くするべきです」と話すのは気候環境大臣のオラ・エルヴェストゥエン氏だ。彼は2025年までに、ノルウェー国内販売車をすべてゼロエミッション車にする、という公約達成を支援している。この計画は、2015年のパリ協定にもとづく、ノルウェーのCO2削減目標を支持するものだ。パリ協定は、気候変動抑制に関する最新の国際的枠組みで、世界各国がCO2排出量削減目標を達成するための厳しい基準を課されている。

 ノルウェー政府は電気自動車購入者向けに、高額の車両輸入税や登録税、消費税を免除するといった支援策を講じた。さらに、所有者には道路通行料無償化、過密した市街地でのフェリーおよび路線バスの料金免除といった特典がある。

 政府が今年これらの支援策に投じた資金は約10億ドル(約1,100億円)にのぼり、2021年に段階廃止されてからも、すべての道路交通料についてガソリン車所有者の半分以下に設定される予定だ。電気自動車の補助金制度が徐々に、ガソリン車への高額課税へとシフトしていくことになる。

 新車の登録税は、ガス排出量によって金額が上昇するスライド制に基づいている。エルヴェストゥエン氏は、2025年の目標が破綻しないように、電気自動車のインセンティブを調整していく、と約束している。

「単にインセンティブを付与することが目的ではなく、普通車の排出ガスに税金が課せられている、ということが重要なのです」と彼は言う。

 よりクリーンなエネルギーへと消費者をシフトさせていく手段としての増税は、ときに慎重さが必要だ。今秋、燃料税を増税したフランスでは貧困家庭、とりわけ自動車以外に移動手段を持たない農村部で家計が圧迫されることとなり、抗議が噴出する事態となった。

 この意味で、ノルウェーは外れ値となる。この国は数十年間にわたり天然ガスや石油など、今まさに世界が使用を控えようとしている化石燃料を輸出しており、経済的に非常に潤っている。所得や物価はヨーロッパ随一の水準だ。

 新車販売台数の約36%は、この国の厳しい冬に安全をもたらすSUVだ。テスラのSUV「モデルX」は、環境に配慮するノルウェー人に人気の車で、価格は約90万クローネ(約1,100万円)だ。

「テスラのモデルXは、高級車ボルボの標準と比べても、そう高くありません。ボルボのようなガソリン車には高い税金が課せられるからです。これもまた、テスラ車が売れる理由の1つです」とノルウェー電気自動車協会のクリスティーナ・ブ氏は語る。たとえば、高級ガソリン車のボルボXC90 SUVは、アメリカでの販売価格が4万7,700ドル(約530万円)だが、ノルウェーでは91万9,000クローネ(約1,160万円)から販売される。

 電気自動車のファミリーカー市場は最近まで、バッテリーの寿命が長いテスラ車の独占状態だった。しかし、アウディのe-tronなどのより高級なブランドが参入してきた。需要は依然として供給を上回っており、ノルウェーでは電気自動車の新車注文から納車まで1年も待たなければならない。

 ノルウェーは2030年までに、1990年レベルと比較して温室効果ガス排出量を40%削減する、と約束している。2017年までの排出量を見ると、1990年基準で3%増加しており、より努力が求められる。道路輸送での排出量を削減すれば、ノルウェーが目標達成のために他の欧州諸国から購入する排出枠を減らすことができる。ここで節約できる金額は数十億ドルに達する可能性があり、潜在的に電気自動車の補助金のコストを相殺する可能性がある。

 ノルウェーは、市場開拓するにあたり、中国の支援を求めている。

 中国は、電気自動車に多額の投資を行っている。その理由は、パリ協定の目標値をクリアするため、都市の渋滞を解消するため、そして製造業における成長分野にいち早く乗り出すためだ。中国自動車協会によると、10月には新車の6%が電気自動車となり、前年比で約50%増加した。専門家によると、この市場は大きく成長する可能性があり、ノルウェー同様、市場の活性化は政府のインセンティブ頼みだという。

 ノルウェーとしては、大規模な中国市場が業界にとって追い風となり、バッテリー寿命の改良といった技術開発の迅速化や価格引き下げにつながることを望んでいる。

 専門家は、電気自動車市場の収益拡大には、さらに開発を進める必要があると話す。小型車のバッテリー寿命は短く、中古販売市場についても未知数だ。バッテリーの高速充電スタンドは、ガソリンスタンドと比べて時間がかかる。車がほとんどいないことも多いノルウェーの山道では、スタンドを設立した民間企業に政府が補助金を出していても、なかなか利益を上げるのが難しい。

 市内中心部ですら、充電スタンド建設が車両販売台数に追いついていない状況だ。オスロ市内のとある駅では、テスラ車の運転手がノートパソコンを開きながら充電が終わるのを待っている。また、アイダ・ヴィホヴデ氏は指をたたきながら、充電スタンドの空き待ちをしている。

「政府がもっとスタンドを作ってくれれば、問題は解消するのですが。今は充電器が空いていないので、座って待つしかないのです」と語る女性の横には、ワーゲンの電気自動車Golfがある。

By MARK LEWIS, Associated Press
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Text by AP

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