環境改善のため閉鎖・再整備 フィリピン・ボラカイ島、「汚水溜め」からの脱却
10月26日、満員の観光客を乗せた船がフィリピンのボラカイ島へと出航した。ボラカイ島には長年に渡り大量の観光客が押し寄せ、好き放題に島を楽しんだ。しかし何の対策も施さなかった結果、周辺の海は大統領に「汚水溜め」と呼ばれるほどになってしまった。その水質を元のきれいな状態に戻すため、島の当局者は6ヶ月の間、観光客の受け入れを停止していたが、この度再開されることとなった。
フィリピン、アクラン州中部にあるボラカイ島の当局者は、観光客の大量流入とビーチを荒らす行為を規制し、リゾート地の混雑を緩和するとともに、ターコイズ色の海に汚水がそのまま排出されないようにするため、新たな規則を設けた。ボラカイ島のホテルや企業のうち、この新規則のもとで営業を再開できたのはほんの一握りに過ぎない。また、職をなくした労働者は20,000人を超えるが、再就職を果たせた者は少ない。
ベルナデット・ロムロ・プヤット観光大臣は、島を訪れる観光客に向け、「島を自分の家のように扱ってください。島を元のきれいなままにしてください。ビーチでの飲酒、喫煙、ゴミの放棄はご遠慮ください」というメッセージを発信した。
観光客が降り立つ港の近くにある白砂のビーチでは、ボラカイ島の「一部営業再開」を記念するセレモニーが開催され、閣僚や地元のセレブリティが出席した。
整備を新たにしたボラカイ島初の外国人観光客の1人で、ドイツ出身のローラ・ヘーアハマー氏(27)は、半年間の閉鎖措置を支持し「少しの間自然を休ませ、島をくまなくきれいにできるようにするために島全体を閉鎖するというのは、すばらしいことだと感動した」と言う。「再び島を訪れれば必ず、誰にとっても以前より快適な場所になっていると感じることができるだろう」
当局者によると、観光客の数を1日約6,000人程度に制限した上で、観光客には、ゴミを適切に処理することや、ビーチでの飲酒、喫煙、焚火、ビーチを荒らす行為の禁止などを盛り込んだ新たな規則に従うことを誓約するため、署名してもらう。
ボラカイ島には数百軒のホテル、民宿、レストラン、土産物店が存在するが、認可を受けた下水管を使用することや、海から30m離れた場所に立地することなどを定めた規則に準拠し、営業を再開できたのは157軒に過ぎない。
ロイズ・ランデヴーという10室の民宿と、旅行代理店、旅客用フェリーを家族で所有する、ギル・デ・ロス・サントス氏は、ボラカイ島の観光客受け入れ再開を歓迎している。
「天候が良く、水も澄んでいる。最善の方法でより良い場所となったボラカイ島を歓迎している」と、デ・ロス・サントス氏(42)は言う。「ボラカイ島が、再起動したようだ」
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、2月に島の復旧に向けボラカイ島の閉鎖を命じ、海に放棄されたゴミが周辺の海を「汚水溜め」のようにしたと発言した。
島の閉鎖中、当局の調べにより沿岸部から海にそのまま汚水を排出できる下水管が隠されていたことや、2軒のホテルが規制対象となっている湿地に建てられていることが発覚した。また、海に面した建設禁止エリアにかかっているとして、取り壊されたリゾート施設もある。これは数ある違反行為の1つであり、国内有数の観光地であるにもかかわらず長年に渡り調査が行われていなかった。
市長は停職処分となり、他にも当局関係者16人がボラカイ島の荒廃に対し適切な措置を行わなかったとして告訴されている。
内務自治省で長官を務めるエドアルド・アノ氏は、ボラカイ島全域を徹底的に再整備するには、6ヶ月では足りなかったと言う。観光客の受け入れを再開したときにも、作業員がコンクリート道路の拡張工事を進めている最中であり、島の保養地に粉塵が舞っていた。
昨年は、200万人超の観光客が、砂がサラサラのビーチや、見事なサンセット、賑やかな夜の街を求めてボラカイ島を訪れ、約560億ペソ(約1,200億円)の収益をもたらした。しかし政府の調査によると、対策を取らないまま大量の観光客を受け入れ続ければ、ボラカイ島は10年もしないうちに「死んだ島」となってしまう恐れがある。
フィリピンでは、ボラカイ島以外のビーチリゾートやその他観光地もまた、長年にわたり環境・安全規制に違反してきたと思われ、今後、閉鎖の恐れがあると警告を受けている。そのような課題は、東南アジアに莫大な収入をもたらしてくれる観光事業には付き物だ。
タイでは、レオナルド・ディカプリオ氏の映画『ザ・ビーチ』で有名になった入江に観光客が大量に押し寄せたことで環境被害が発生し、当局は回復に向け同地を閉鎖した。
By JOEAL CALUPITAN, Associated Press
Translated by t.sato via Conyac