目標甘い?日本の新エネルギー計画 「中国の動き考えると妥当」という評価も

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◆パリ協定の目標達成は困難 いまだに石炭火力の日本
 気候変動に関するパリ協定で、日本政府は2030年までに2005年レベルより25.4%の温室ガス排出削減を約束しているが、実際のところ2015年時点で排出は2005年より5%しか減っていない。さらに1990年と比べれば、実は4%高くなっているとヒューズ教授は指摘し、温暖化ガス削減の足取りは遅いと述べている。

 同教授によれば、日本の化石燃料燃焼は全温暖化ガス排出量の3分の1を占めており、その半分弱は石炭火力発電によるものだという。東日本大震災前に65%だった化石燃料による発電はその後大幅に増えた。AFPは、福島の原発事故で石炭のような化石燃料に頼らざるを得なかったことは理解しつつも、2030年の目標は56%で、依然として高すぎると見ている。

◆エネルギー安全保障が第一 地政学的リスクを警戒
 一方、フィナンシャル・タイムズ紙に寄稿した英キングス・カレッジ客員教授、ニック・バトラー氏は、温暖化ガス削減、再エネ拡大は結構だが、日本のエネルギー政策を動かすのは、エネルギー安全保障だと指摘する。日本は1970年のオイルショックで中東への原油依存の危険性を思い知らされ、2011年の福島原発の事故による原発停止では、大量の天然ガスを高値で輸入をせざるを得なかった。現在では天然ガスの価格は下がり、売ってくれる国は山ほどあるが、それに頼っていてはだめだと同氏は主張する。

 同氏が見る日本にとっての脅威は、中国の台頭だ。中国自体が石油や天然ガスの世界一の輸入国になりつつあり、エネルギーの海外依存は高まっている。将来的には力で資源を抑えに出る可能性もあり、有事の際には通商ルートを封鎖されることもあり得る。同盟国のアメリカが軍事力で助けてくれるとも限らず、結局日本はリスクを理解しそれを抑えることに取り組むしかない。そういった意味で、石炭火力の効率化や原子力推進を含む今回のエネルギー計画は輸入依存への懸念に対応したもので、合理的だと同氏は評価している。

Text by 山川 真智子