捕鯨問題 海外の反応まとめ
日本の捕鯨活動をめぐり、海外からの批判が集中している。
日本では、有史以前から捕鯨が行われてきており、西洋の捕鯨とは別の独自の捕鯨技術を発展させてきた。
日本に対する捕鯨への風当たりが強まるなか、1986年、商業捕鯨モラトリアムが国際捕鯨委員会で採択されてから、商業捕鯨は禁止されてきた。しかし、科学的データ収集のための捕鯨は許可される、という例外の下、日本が食用のための捕鯨を続けてきた過去がある。
近年、ハーグ(オランダ)にある国際司法裁判所(ICJ)で、日本の南極海での調査捕鯨は国際条約違反とする判決が出たことを契機に、反捕鯨派のオーストラリアやニュージーランド等の国々は、今もなお行い続けている日本の捕鯨活動を厳しく非難し始めた
しかし、その一方で、国際関係を鑑みて、双方の理解が重要であるとの慎重な姿勢も、世論から垣間見られるようになった。
以下、昨今の主要な海外の反応をまとめる。
1)捕鯨は「日本の伝統に反する」? 豪紙、“反・反捕鯨”の動きに懸念
豪オーストラリアン紙は、『In Blood and Guts: Dispatches from the Whale Wars』で、著者のサム・ヴィンセント氏が、日本側の主張の説明を試みていることを紹介している。
ヴィンセント氏は、日本の捕鯨を主張する人々は、捕鯨支持なのではなく、反・反捕鯨派なのだという。捕鯨に対する明確な答えが見つからないとしながらも、対立は、日本の自然や伝統に対する大きな考え方を攻撃することになると懸念している。
(ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙は、日本の調査捕鯨の目的は、水産資源の確保にあると主張している。問題解決のためには、日本の捕鯨再開に固執するのは、鯨ではなく漁業権を守ろうとするものだということを理解する必要がある、と同紙はみている。)
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2)需要減、外国の反対…日本はなぜ捕鯨にこだわる? 政治的背景を英誌が示唆
エコノミスト誌は、現代では日本において、鯨肉を食べる人は少数派で、現在5000トン以上の鯨肉が消費されず冷凍庫で眠っている、と報じており、海外からの強い批判がある中で、なぜ頑なに捕鯨を続けるのか疑問を呈している。
また、同紙は2011年の復興資金の捕鯨への流用問題に見られるように、日本が費用のかさむ調査捕鯨を続けたがるのは、鯨肉需要や科学のためではなく、政治が絡む問題であることを示唆している。
(メリットの少ない捕鯨活動に対して英エコノミスト誌が疑問を呈した記事。政治問題にも発展しつつある日本の捕鯨問題は、ますます混迷を深めるばかりである。)
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3)日本、捕鯨再開の道もあるか? 「クジラは海の“ゴキブリ”」と擁護派が反発、海外警戒
ハーグ(オランダ)にある国際司法裁判所(ICJ)で、日本の南極海での調査捕鯨は国際条約違反とする判決が出た。海外各紙は、日本が判決を順守する一方、回避できる可能性も残っていると報じている。
捕鯨擁護派の元水産庁の小松氏は、「ミンククジラは海の“ゴキブリ”」と発言(オーストラリアの公共放送局ABC)。海外の反捕鯨派の批判の的となった。
オーストラリアの「緑の党」のウィッシュ・ウィルソン議員は、調査捕鯨中止を下されたものの、日本は判決を回避する可能性があると懸念を表明している。
(日本の捕鯨活動に反対している豪アボット首相は就任当時、日本に対し、捕鯨に寛容的な発言をしていた。大きなプレッシャーを抱えて来日するアボット首相がどのような立ち位置を取るか注目される。)
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4)豪州“日本の捕鯨は国際条約違反”と訴訟 勝訴でも敗訴でも、日本には不利になると海外報道
オーストラリア政府は、日本が1988年から1万頭以上の鯨を殺したという事実が条約に違反し、「鯨殺傷につながる捕獲ゼロ」遵守への誠意がない、とICJに訴えていると英ガーディアン紙は報じている
日本の捕鯨に反対を示す、国際環境保護団体グリーンピースの広報担当者は、オーストラリアの訴えを支持する判決が出れば、「日本は非常に難しい立場に追いやられ、南極海での捕鯨活動がかなり厳しくなるだろう」と予想している(AAP通信)。
もし日本に有利な判決が下されても、日本は捕鯨を自由に続けることで世界的な非難がさらに高まるだろう、と同団体のジョン・フリゼル氏の見解をガーディアン紙は報じている。
(アボット首相は、「捕鯨問題は私自身大変憂慮しているが、日本もこの件については我々の立場をよく理解していると思う」と話したという。現在与党の自由党は、第2の貿易相手国である日本との経済関係に悪影響が出ることを懸念し、あまり事を荒立てたくないようだ(豪公共放送局SBS)。)
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5)日本の捕鯨、“脅してでもやめさせろ” ニュージーランド野党が過激批判
「いかなる種類の捕鯨にも反対する」と言ったキー首相の発言に関し、クジラ虐殺に対するニュージーランド人の嫌悪感を表現するのに必要最低限しか言わない、と緑の党がキー首相を批判したことを国営ラジオ局『ラジオ・ニュージーランド』が報じている。
緑の党のギャレス・ヒューズ議員は、「もし日本が捕鯨を執念深く続けるのなら貿易制裁を含むすべての外交的選択を持って“脅す”べきだった」、とキー首相の発言が“あまい”と過激に批判した。
(「日本への外交圧力を高めざるを得ない」と労働党の党首であるデイビット・カンリフ氏の見解を『stuff(Fairfax New Zealand)』は掲載している。なお、キー首相は捕鯨に関する日本の動向を注視し、もし何かあればアクションを起こすと述べつつも、捕鯨再開を止めさせるためにできることは殆どないかもしれないと述べている。)
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