慰安婦×朝日新聞 海外の反応まとめ

 朝日新聞が掲載した慰安婦問題の特集をきっかけに、さまざまな議論が起きている。

 朝日新聞が、慰安婦を強制連行したとする故吉田清治氏の証言を報じた記事を取り消したことを受け、慰安婦問題で謝罪と反省を表明した河野洋平官房長官談話(河野談話)の根拠が揺らいでいる。

 欧米の各誌は、今回の記事撤回の騒動について、政治的雰囲気の変化に影響を受けていると政府による圧力が存在していたと指摘している。

 また、国連高官からは慰安婦問題について批判をする発言がなされており、それに同調する形で韓国メディアが大きく問題を取り上げている。

 議論の終わりが見えない中、欧米、日本は慰安婦問題の解決に向けて、未来志向的な議論に臨みたい構えだ。

 以下、昨今の主要な海外の反応をまとめる。

1)“安倍首相の勝利” 朝日の記事撤回、政治的雰囲気の変化が影響と英紙指摘

 朝日新聞は「福島第一原発をめぐる吉田調書」に関する報道が誤りであったことを謝罪する会見を開いた。同会見では、従軍慰安婦に関する報道が虚偽の情報源に基づいたものであったことを認めた点についても謝罪が行われた。

 エコノミスト誌は今回の記事撤回について「東電と原発推進派の勝利」と報じている。

 フィナンシャル・タイムズ紙も、今回の騒動は「安倍首相にとって追い風となった」と報じている。政府が朝日を撤回に向け動かしたという証拠はない。しかしこのタイミングは、とくに慰安婦問題に関しては、政治的雰囲気の変化に影響を受けていると言えるだろう、と同紙は述べる。

(日本のナショナリズム派は、「朝日の自虐的に歪曲した記事が日本を貶めている」と批判し続けてきた。その声は、日本の誇りを取り戻すことを主眼に置く保守派の安倍晋三氏が首相になってから更に高まった、と同紙は言う。ロイターは、朝日新聞を米ニューヨーク・タイムズ紙と並べて、権力に立ち向かう声として信頼できる媒体であると語っている。)
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2)“日本は今でも慰安婦の人権を侵害”国連高官が批判 韓国紙、国連に「言葉ではなく行動」要求

 ナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官(73)は、「旧日本軍の慰安婦被害者に対する人権侵害は今でも続いている」、と公式声明で批判した。

 韓国主要紙は、声明を大きく取りあげた。ただし、安倍政権は国連の一連の警告や批判について、「さほど気にしていない様子」と朝鮮日報はみている。

 これを踏まえ、同紙は社説で、国連と米国に、「日本政府に対し、言葉ではなく行動で慰安婦関連の蛮行の責任を認めさせ、真の謝罪をさせなければならない」と要求する。

(この報道に対して菅官房長官は、「日本政府は道義的観点から最大限努力してきた」と反論し、慰安婦問題は日韓請求権協定で解決済み、という従来の政府の立場を改めて表明したという。)
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3)「性奴隷」日本批判の元国連クマラスワミ氏に、韓国紙が異例の合同取材 朝日の記事撤回に対抗か

 朝鮮日報(日本語版)によると、スリランカの首都・コロンボにあるクマラスワミ氏の自宅で、「韓国外交部合同取材団」によってインタビューが行われた。朝日新聞が特集記事で、慰安婦募集の強制性の根拠となっていた「吉田証言」を虚偽と判断し、関連記事を撤回した直後のタイミングだ。

 合同インタビューの内容は、朝鮮日報、聯合ニュース、コリア・タイムス、アリランニュースなどが一斉に報じている。それによると、クマラスワミ氏は、報告書は「元慰安婦の証言と歴史的な証拠、日本のNGOへのインタビュー」に基づいており、慰安婦募集の「大半は強制的であったことは明らかだ」などと改めて語った。

(朝鮮日報によれば、報告書では慰安婦が「性奴隷」と表現されていたが、クマラスワミ氏はその理由について、「被害者の証言では明らかに奴隷的な状況にあったため」「女性たちが自身の意思に反し誰かによって統制されていたため」などと語っている。)
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4)オバマの対日韓発言 「慰安婦」に注目する韓国紙、「未来志向」に注目する欧米・日本メディア

 オバマ大統領は韓国に対して、過去へのこだわりを捨て、「未来志向」で前進することを求める発言をしている。各国メディアもこれらの「慰安婦」を巡る発言を報じているが、韓国メディアと日本や欧米メディアの見方には温度差があるようだ。

 欧米のメディアの見方は少し冷静なようだ。AP通信は、オバマ大統領が「元慰安婦たちの言葉に耳を傾け、敬意を払うべきだ」などと語った一方で、日韓両国に「過去の痛みから前進するように求めた」と報じた。

(慰安婦問題をめぐる、日韓の議論の相違を取り上げる記事。日本、韓国両政府には、双方の言い分を客観的に理解し、より建設的な議論を行うことを期待したい。)
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Text by NewSphere 編集部