アベノミクス×成長戦略 海外の反応まとめ

 アベノミクスは、本当に日本の経済成長を後押しするものになるのだろうか。

 安倍首相が掲げる経済政策「アベノミクス」が実施され始めてから、約1年半が経った。「デフレからの脱却」、「富の拡大」を実現するために実施され始めた経済政策「アベノミクス」。「3本の矢」といわれる3つの政策で構成されている。

 第1の矢といわれるのが、「大胆な金融政策」。金融緩和で銀行へ流通するお金の量を増やし、個人、企業が資金を借りやすくしている。これにより、デフレ意識が払拭されるとされている。

 第2の矢といわれるのが、「機動的な財政政策」。約10兆円規模の経済対策予算によって、政府が自ら率先して需要を創出するという。つまり、公共事業などにより、企業に直接お金が渡る仕組みだ。

 そして、第3の矢といわれるのが、「民間等位を喚起する成長戦略」。規制緩和等によって、民間企業や個人が真の実力を発揮できる社会へするという。海外からの投資や人材を呼び込み、イノベーションを起こしやすくする狙いもある。

 欧米メディアは、第1、第2の矢の成果を認める一方で、成長戦略の具体性のなさを強く批判している。

 しかしながら、中韓メディアからは、自国経済との比較を通じて、経済回復の兆しが見え始めたとして、一定の評価を下されている。

 以下、昨今の主要な海外の反応をまとめる。

1)アベノミクス成長戦略、移民受け入れか “少子化対策だけでは無理“な人口目標に海外注目

 安倍内閣が目指す新たな成長戦略の骨子案が明らかになった。骨子案には、減り続ける人口を、今後50年間で20%減の1億人程度に保つことも目標に盛り込まれた。ロイターは「外部の専門家は、移民の受け入れなしにこの目標を達成するのは難しいと指摘している」と記す。

 ウェブ誌『ディプロマット』のオピニオン記事も、少子化対策に着目する。3人以上の子供を持つことを奨励する予算が拡大される見込みだとしている。しかし、最終的には移民の大規模な受け入れを含む「大胆な手法」が、1億人以上に人口を保つためには必要だとしている。

(今回の骨子案には移民拡大政策への直接的な言及はないが、政府はホワイトカラーの専門職の海外からの受け入れと、単純労働者を研修制度のもとで受け入れることを推進している。ロイターによれば、政府は今後、研修生の滞在期間と労働可能な範囲の見直しを含む研修制度の「全面改革」を行う計画だという。)
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2)成長戦略は、ただのスローガン 海外紙は酷評 アベノミクス期待の裏返しか

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、アベノミクスの第3の矢である成長戦略について、従来の構造改革議論と同様に、具体性、実現性に欠けるとの評価を下している。

 フォーリン・アフェアーズ誌(オリエンタル・エコノミスト・アラート誌編集長のリチャード・カッツ氏寄稿)は、「日本は最終的には改革し、復活するだろう」と考えているが、アベノミクスはまるで改革になっていない、と断じる。構造改革については、漠然としたスローガン以上のものには進んでいない、と厳しく批判している。

(安倍首相は、アベノミクス構造改革を日本再興戦略と位置づけ、その遂行に躍起であるが、世界中からの注目を集めているだけに、未だ成果が出ていないという批判的な声が目立つ形となっている。)
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3)アベノミクス失敗すれば2016年に政権交代あり得る? 米誌指摘

 アベノミクスは「第3の矢(民間投資を喚起する成長戦略)」の核となる提唱する日本社会の構造改革を実行する段階に入っている。これについて、独立系リサーチ会社、ジャパンマクロアドバイザーズの大久保琢史チーフエコノミストは「主な改革は何も進んでいないと思う」と悲観的だ。

 ノムラ・インターナショナル香港のクルツ氏も「安倍首相が難しい構造改革を押し進めるためには、もっと時間が必要だ」と同様の見方を示す。同氏は安倍首相が自民党内で政策実行のコンセンサスを得るのに苦労しているのが原因だと見ている。これについて、『フォーリン・ポリシー』は、2016年の総選挙までに目立った成果が見られなければ、再び政権交代もあり得ると記している。

(米『フォーリン・ポリシー』誌は、現在の世界経済を俯瞰する記事の中で、安倍政権誕生以降の「政治的なシフト」が日本の経済政策をドラマチックに変えるかもしれない、としている。総じてみると、世界中のメディアが安倍内閣の行方に注目していることが伺える。)
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4)具体案なき成長戦略、「針」「ノミ」…皮肉な比喩で海外紙が批判

 海外紙は、一挙に核心を突けない日本再興戦略の改革進捗にもどかしく感じてもいるようだ。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、「構造改革となると日本の首相は、ウィリアム・テルのように1発でリンゴを割るとはいかない。むしろ彼は、1本か2本が実際に効くかもしれないと期待して千のハリで政治の体を串刺しにする、見習い鍼灸師に似ている」と喩えた。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙のほうは、安倍首相がダボス会議で「私は喜んで(既得権益を砕く)ドリルの歯の役を果たします」などと発言していたことを引用して、「ドリルの歯などではなく彫刻家のノミを使っている」と、戦略案の威力不足を皮肉った。

(海外各誌が、アベノミクスの第三の矢である成長戦略の進捗具合に不満を感じているという記事。たしかに、安倍内閣による具体案の遂行は乏しいが、このような批判が多くなされる背景には、それだけ各国がアベノミクスの行方に注目していることをうかがい知ることができる。)
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5)「アベノミクスがうらやましい」 韓国紙が評価 自国の政治停滞への憂慮からか?

 日本に厳しい韓国のメディアでさえも、アベノミクスに好意的な評価を示している。アベノミクスの成否はまだ出ていないとしつつも、「日本経済の回復という明確な目標に向かって最高指導者が先頭に立ち、一貫した政策を推進し、そのような指導者の意志に国民と企業が信頼を送っているという点」がうらやましいと報じている。

 一方で、朴槿恵(パク・クネ)政権が政策を定めることができないまま1年を過ごし、今年2月にようやく政策構想を発表したこと。また、その政策もセウォル号沈没事故の対応のまずさや、それに伴う消費の冷え込みで、スタートをきれずに上半期が過ぎてしまったことを憂慮している。

(中央日報も、「アベノミクスがうらやましい」というコラムで、元気のない自国経済と比較し、アベノミクスの効果を評価している。安倍政権の一貫した成長志向のメッセージが日本全体の心理を変えた結果だとし、安倍首相を暗に称賛しているようだ。)
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Text by NewSphere 編集部