一時期は絶滅寸前にまで追い込んだが… スロバキアのクマ駆除対策に環境保護団体が反発

画像はイメージ(Pat (Cletch) Williams / Flickr

近年、日本ではクマによる人身被害や出没情報が多発していますが、海外でも同様のケースが増加傾向にあるといいます。

【動画】環境保護団体からは「ヒステリックな反応に過ぎない」 クマ被害が多発するスロバキア

スロバキアのクマ対策

ほとんどの国が、被害があった場合の駆除を許可しているなか、長年スロバキアを始めとするヨーロッパの各国はクマの駆除が制限されてきました。

特に同国では1930年代、乱獲によりヒグマが絶滅寸前に追い込まれ、わずか数十頭ほどにまで減少。

2020年には2,500~3,000頭まで回復するも、今度はクマと人間の遭遇や事故が頻発するようになってしまったのです。

そこで2025年4月、トマーシュ・タラバ環境相は、クマの個体数が増加したことによる規制が必要だとして350頭を駆除する計画ほか、食肉用としての利用を発表しました。

ところがこれに対し、各環境保護団体が反論。

世界自然保護基金(WWF)スロバキア支部の弁護士兼政策マネージャーを務めるパボル・ジリンチークさんは「人身事故に対する政府のヒステリックな反応に過ぎない」とメディアにコメント。

「政府は『クマが多すぎるから殺そう』と物事を単純化しようとしている。しかし解決策は、クマとの遭遇を減らす対策を導入することではないか」と述べました。

ほかにも保護団体「We Are the Forest」の代表者は「クマを無差別かつ標的を絞らずに射殺することは解決策にならない」と指摘。

ポーランドを拠点とする団体もまた、スロバキアの政策に関し「ポーランドやチェコ共和国といった近隣諸国のクマの個体数にも影響を及ぼしかねない」とする反対意見を寄せました。

世間からは「そしてまた今度は絶滅の危機になる」「ヨーロッパは環境への見方が厳しいからね」「駆除計画を反対するわけではありませんが、クマも地球上の生物です。共存方法を見つけなければならないと思う」「大幅な個体数の減少が、今度は別の問題を生み出さなければいいけれど」といった声があがっています。

Text by 春野 なつ