サンゴ群生や赤いキノコサンゴ… アルゼンチン深海で発見された新種候補

画像はイメージ(NOAA Ocean Exploration/ Flickr

アルゼンチン沖のマル・デル・プラタ海底谷で、研究チームが初の本格的なROV調査を行い、40種以上の新種候補を含む多様な生態系を確認しました。

【動画】アルゼンチンの調査で発見された40種以上の生き物

アルゼンチン沖で見つかった新種候補

成果はシュミット・オーシャン研究所(Schmidt Ocean Institute)の調査船「ファルコー(too)」を用いた21日間の航海で得られたものです。

探査では、深度3500メートルを超える海底谷でサンゴ群集や無脊椎動物が記録され、特に1014メートル地点では硬質サンゴ「バテリア・カンディダ(Bathelia candida)」の群生、1500メートル地点では赤色のキノコサンゴ(Anthomastus sp.)が広がる景観が確認されました。

今回の探査は、これまで2012年や2013年に採集網によるサンプル調査を行ってきた研究の延長に位置づけられますが、ROVによるライブ映像で海底を直接観察できたのは初めてです。

主任研究者であるダニエル・ラウレッタ博士は「一生に一度の経験であり、10年来の同僚たちと共有できて光栄だ。ROVによる映像は素晴らしい品質で、この生息地の複雑さと生物多様性を理解する助けになる」と述べています。

一方で、海底では靴やプラスチック袋、漁具など人間活動の痕跡も確認され、環境保全の重要性を示す結果ともなりました。

研究チームは今後、採集データを精査し新種の確認作業を進めるとともに、資源管理や保全に役立つ基盤データとして活用する予定です。

今回発見された新種候補については、既知種との比較や論文発表を経て、正式に特定されることになります。

シュミット・オーシャン研究所のジョティカ・ヴィルマニ所長は「今回の航海は科学の力が人々の想像力をかき立てることを示した」とし、アルゼンチン社会全体が自国の深海に目を向けた意義を強調しています。

この探索について世間では「アルゼンチンの科学者たちは私たちの誇りだ。CONICETに感謝します」「平均4,000回だった潜航配信が今回50万回に。アルゼンチン、ありがとう!」といった称賛の声が多く寄せられました。

さらに「子どもたちが『いつまた深海を見られるの?』と楽しみにしている」「公共教育と科学の力を改めて感じた」といった意見もあり、次世代の教育や科学への関心の高まりにもつながっています。

Text by 本間才子