5億年前の姿そのまま! 「農場で見つかった」“生きた化石”
画像はイメージ( Wikipedia Commons )
南アフリカ・ステレンボッシュ大学の学生が、約5億年前から姿を変えていない「生きた化石」とされるベルベットワームの新種を発見しました。
研究成果は、学術誌『Ecology and Evolution』に掲載されています。
南アフリカでベルベットワームの新種
発見があったのは2022年3月、場所は南アフリカの西ケープ州にあるスワートバーグ山脈の農場です。
昆虫や爬虫類を探して岩をひっくり返していた自然保全学・昆虫学専攻のローハン・バーナードさんは、川のそばの湿った落ち葉と砂の下から、スレート色をした黒いベルベットワームを発見。
その希少性を認識していた彼は標本を採取し、生物多様性観察アプリ「iNaturalist」に投稿しました。
ローハンさんが見つけたこの生物は、専門家による調査の結果、これまでに報告のない新種であることが判明。
「ローハンズ・ベルベットワーム(学名:ペリパトプシス・バーナルディ[Peripatopsis barnardi])」と命名されました。
本種は、乾燥地域として知られるリトルカルーで初めて確認されたベルベットワームであり、同地域がかつて森林に覆われていたことを示す手がかりでもあります。
ベルベットワームは、有爪動物門に属し、関節のない脚と柔らかい体を持つ原始的な形態が特徴です。
その起源はカンブリア紀(約5億4000万年前)にまで遡り、化石からは、現在の種とほとんど変わらない構造が確認されています。
そのため「生きた化石」と呼ばれています。
現地を訪れた進化生物学者のサヴェル・ダニエルズ教授は、追加で9体の標本を収集し、ミトコンドリアおよび核DNAの配列解析、形態分析、電子顕微鏡観察(SEM)を実施しました。
その結果、ペリパトプシス・バーナルディ(Peripatopsis barnardi)は約1520万年前に近縁種から分岐した独立系統であることが明らかになりました。
さらに本研究では、ペリパトプシス・バーナルディを含むベルベットワームの新種7種が確認され、それぞれの発見地にちなんで命名されています。
ダニエルズ教授は、市民科学の貢献を評価し、未調査地域にも固有種が存在するとし、古代林の保全が絶滅防止の鍵だと述べています。
新種に名を残したローハンさんは、「発見に希望を感じる一方、知られぬまま絶滅する命への不安もある」と語っています。
この発見は、ネット上でも「学生による生涯に一度の発見」「若き研究者の功績が認められた感動の物語」として注目を集めています。




