10年で3種目の新発見! ミツスイの進化が示す島の多様性

画像はイメージ(Phil Fiddyment / Flickr

インドネシア東部のババル島で、新種のミツスイの鳥が発見されました。

【画像】新種の「ババル・ミツスイ」誕生 発見の原点は2009年の録音

研究成果は、国際学術誌『Bulletin of the British Ornithologists’ Club』に掲載されています。

インドネシアで新種の鳥

調査を行ったのは、バードライフ・インターナショナルに所属する研究者アレックス・ベリーマンさんのチーム。

インドネシア・マルク州のバンダ諸島、タニンバル諸島、ババル島に分布する小型のミツスイ「バンダ・ミツスイ(Myzomela boiei)」について再評価を行いました。

従来は、「バンダ・ミツスイ(Myzomela boiei boiei)」と、「タニンバル・ミツスイ(Myzomela boiei annabellae)」の2亜種に分類されていました。

今回の研究では、羽毛の色や体格に加え、鳴き声の違いにも注目。

音声解析により、3つの島の個体群がそれぞれ異なるさえずりを持つことが明らかになりました。

この結果、3つの個体群は互いに繁殖しない別種と見なすべきと判断され、特に学名が未定だったババル島の個体群には、「ババル・ミツスイ(Myzomela babarensis)」という新種名が与えられました。

研究チームは、それぞれの島の名を引用し、「バンダ・ミツスイ(Myzomela boiei boiei)」、「タニンバル・ミツスイ(Myzomela boiei annabellae)」、「ババル・ミツスイ(Myzomela babarensis)」の3種として分類することを提案しています。

発見のきっかけは2009年、ベルギーの鳥類研究者フィリップ・ヴァーベレンさんがババル島を訪れ、ミツスイのさえずりを初めて録音・撮影したことにさかのぼります。

その後、オーストラリアの生物学者コリン・トレイナーさんらの追加調査と共著論文を経て、今回の本格的な音声比較による分類見直しに至りました。

なお、インドネシアでこの10年以内に記載されたミツスイの新種はこれが3例目。

2017年にはロテ・ミツスイ、2019年にはアロール・ミツスイが記載されており、いずれもさえずりの違いが分類の決め手となっています。

ミツスイの3種はいずれも限られた島にしか生息していないものの、比較的環境変化に強く、現時点では絶滅のおそれは低いと見られています。

この新種を最初に発見したヴァーベレンさんのビジネス向けSNS「LinkedIn」には、「おめでとうございます」「インタビューも素晴らしかったです」「興味深いですね」など、称賛や関心の声が寄せられていました。

Text by 本間才子