深海1044mで発見! インクも出さず色も変えない、新種の「ダンボ・オクトパス」

画像はイメージ(Flicker/ Elias Levy

オーストラリア西部沖の深海で、ゼラチン質の体に血のような赤い触手、大きな目を持つ新種のタコが発見されました。

【画像】ゼラチン質の不思議なタコ「カーナーヴォン・フラップジャック・オクトパス」

オンライン学術誌『Australian Journal of Taxonomy』で発表されています。

オーストラリアで見つかった新種のタコ

発見地にちなみ、「カーナーヴォン・フラップジャック・オクトパス」と名付けられました。

新種は、2022年にオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)が実施した深海調査航海で採集された標本から確認されたものです。

調査は、研究船「インヴェスティゲーター号」により実施され、西オーストラリア沖のガスコイン海洋公園とカーナーヴォン・キャニオン海洋公園の海底環境と生物多様性が対象となりました。

調査期間は約1ヶ月に及びました。

研究チームは、深度1000mを超える海域でハイテクカメラやネット、ソリを使って標本と映像を収集。

採集された中には、これまで記載のなかった新種とみられる生物が多数含まれており、航海終了後も博物館や研究機関が連携して同定作業を続けています。

このタコは、「ダンボ・オクトパス」と呼ばれる深海性のシレート型(耳のようなひれと膜を持つ深海性のタコ)で、体長はおよそ4㎝と小型です。

体を平たく広げてパンケーキのような形になったり、傘のように丸まったりと、柔軟に姿を変えることができます。

大きな目は、暗い深海での獲物探しに適しており、主にゴカイや小型の甲殻類を触手で捕らえて食べていると考えられています。

研究を主導したトリスタン・ヴァーホフ博士は、「この種は、インクを出さず、体色も変えない、柔らかくゼラチン質な珍しい深海生物です。

近年ようやく記録され始めた種が多く、今回の発見もその一つです」と語っています。

採集された個体は、カーナーヴォン・キャニオンおよびガスコイン海洋公園の水深1044〜1510mの範囲から得られたもので、現時点ではこの海域にしか生息が確認されていません。

なお、同じ調査航海では、「ペインテッド・ホーンシャーク」や「パラレルスパイン・スコーピオンフィッシュ」といった他の新種も記録されており、今後さらに多くの種が記載されるとみられています。

この新種の発見にはネット上でも関心が集まり、「自然界の神秘に驚かされる」「まだ見つかっていない生き物がたくさんいそう」といった感嘆の声のほか、「食べられるのかな?」といったユーモアを交えたコメントも見られました。

Text by 本間才子