3億5500万年前の“ツメ付き足跡”が進化の教科書を変えるかもしれない

画像はイメージ(Flicker/ Ben Salter

オーストラリアで発見された約3億5500万年前の足跡により、脊椎動物の進化に関する定説が見直される可能性が示されました。

【動画】「定説を覆す発見」豪州で見つかった3億5500万年前の足跡が進化の歴史を書き換える?

この研究成果は、国際学術誌『Nature』に掲載されました。

オーストラリアで見つかった足跡

調査を行ったのは、スウェーデンのウプサラ大学などの国際研究チームです。

ビクトリア州ブロークン川流域の砂岩層で、アマチュア古生物学者が発見した約50㎝ほどの石板に、長い指と明確なツメの跡を伴う足跡が17個確認されました。

足跡はそれぞれ約3〜4cmの大きさで、全長60〜80cmほどの同じ爬虫類の個体3体が歩いたものと推測されています。

これらは、石炭紀初頭に相当する地層から見つかり、これまで最古とされていた約3500万年前の有羊膜類(ユウヨウマクリュウ)よりも3500万年も古い年代にあたります。

有羊膜類は、卵の中に羊膜を持つことで乾燥した陸上環境に適応した動物群で、現生の爬虫類、鳥類、哺乳類の共通祖先とされています。

ツメは初期の有羊膜類に特有で、他の四肢動物にはまれなことから、足跡の主は有羊膜類と判断されました。

また、同時に発表されたポーランドでの足跡化石も、従来の記録より明らかに古く、有羊膜類の出現時期を見直す根拠となっているとのこと。

さらに、研究チームは現生動物のDNAをもとに作られた進化の「家系図」と、化石が見つかった年代とを照らし合わせる調査を実施。

その結果、両生類と有羊膜類の祖先が分かれた時期は、従来よりも古く、デボン紀後期にまでさかのぼる可能性があるとされています。

これは、魚類と四肢動物の中間的な特徴を持つ化石生物「ティクターリク」などが、ようやく上陸を始めたと考えられていた時期に、すでに高度に進化した四肢動物が多様化していた可能性を意味するといいます。

発見された足跡の石板は、現時点でゴンドワナ大陸(アフリカ、南アメリカ、南極、オーストラリア、インドを含む)の石炭紀初頭の四肢動物化石として唯一の証拠となっており、その学術的意義は極めて大きいとされています。

この発見については、「3億1800万年前から3億5000万年前への変化を“覆す”というのは大げさではないか」といった懐疑的な声がある一方で、「3200万年あれば進化的には十分に大きな変化が起こり得る」とする意見も寄せられていました。

Text by 本間才子