コウイカが腕で“サイン”を送っていた?  研究で見えた頭足類の意外な社会性

画像はイメージ(Rickard Zerpe / Wikipedia Commons

ユニークな擬態能力で知られるコウイカが、「腕の動き」を使って仲間とコミュニケーションをとっている可能性があることが、新たな研究で示されました。

【動画】コウイカが“手話”で会話? 腕の動きで仲間と意思疎通

この発見は、未査読論文を集めたプレプリントサイト「bioRxiv(バイオアーカイブ)」に掲載されています。

コウイカのコミニュケーション

研究を行ったのは、フランス・高等師範学校の神経科学者、ソフィー・コーエン・ボデネスさんとピーター・ネリさんです。

対象となったのは、ヨーロッパ沿岸に生息するヨーロッパコウイカ。

皮膚の模様を瞬時に変化させる能力で知られるこの頭足類は、これまでにも体の色や姿勢を通じた視覚的なコミュニケーションが報告されていました。

今回の実験では、水槽内に複数のコウイカを配置し、互いの動作を観察。

さらに、記録した映像を個体に再生して反応を分析した結果、4つの明確な腕の動きのパターンが確認されました。

1つ目は「アップ」と呼ばれる動きで、コウイカが腕をまっすぐ上へと垂直に持ち上げます。

2つ目は「サイド」で、左右いずれかの側に腕を大きく広げ、体の片側を強調するような動作。

3つ目の「ローズ」では、腕の動きに加えて頭部や眼の形も変化し、その姿はまるでタコのように見えるユニークな表現となります。

そして4つ目の「クラウン」は、複数の腕を放射状に広げ、王冠のようなシルエットをつくる動きです。

これらの動きを記録した映像を別のコウイカに見せたところ、同様のサインを“返す”ような反応を確認。少なくとも視覚的にサインを認識していることが明らかになりました。

研究チームはさらに、これらの動きが水中に発生させる微細な波(振動)にも注目。

水中マイクを用いて各サインが発生させる波動を記録し、その音を別のコウイカに再生したところ、腕を振り返す反応を示しました。

こうした結果から、これらの動きが伝える具体的なメッセージについては、今後の解析によって明らかになるだろうと見ています。

この研究結果を受けて世間では、「腕を上げて手を振る姿が、とても可愛くて恥ずかしそう」「腕を1本だけあげたら、“いわゆる中指のジェスチャー”?」「コウイカが社会的な一体感とコミュニケーション能力を持っていて興味深い」など、ユーモアを交えた声や驚きのコメントが多く寄せられています。

Text by 本間才子