水深8000mの闇に潜む“神の名を持つ生物” 深海に眠る進化の謎

画像はイメージ(Flicker/ NOAA Photo Library

北太平洋のクリル・カムチャツカ海溝で、新種の深海ダンゴムシが発見されギリシャ神話の神たちの名前がつけられました。

【画像】ギリシャ神話の神たちの名が付けられた等脚類

この発見は、出版社「PENSOFT」が展開しているドイツの学術誌「Zoosystematics and Evolution」に掲載されています。

深海から5つの新種を発見

超深海にすむ小さなダンゴムシたちのグループ「ハプロニスクス属」の新種が採集されたのは、最大8,000mに達する深海です。

2012年〜2016年にわたる調査の結果、5つが新種として登録されました。

この新種はいずれも特有の尻の構造を持っており、なかでも突出して特徴的な形状を持つのが「ハプロニスクス・ハデス」。

尻部の毛角が隠れるような独特な構造になっていて、成体のオスの体長は3.7mm、メスでは2.4mmほどと小さく、体形は歪円です。

名前の由来は、ギリシャ神話に出てくる死者の国の神「ハデス」にちなんでいます。

クリル&カムチャツカ海溝の超深海帯に分布していることに加え、オスの成体では尻部の相角板が尻角まで繋がり、底面から尻角が見えなくなることから、「隠れ帽子」を思い起こさせるとして名付けられました。

隠れ帽子とは、ハデスが持っていたとされる、装着すると姿を隠すことができる魔法の帽子です。

この発見と同時に、同じ領域で新たに4種のハプロニスクス群の新種も記述されました。

それぞれ、騙しの女神アパテ(ハプロニスクス・アパティカス)、暗闇の元神エレボス(ハプロニスクス・エレブス)、地獄の門を守る多頭犬ケルベロス(ハプロニスクス・ケルベロス)、夜の女神ニュクス(ハプロニスクス・ニュクス)による名前が付けられています。

これらの付名は、それぞれの神たちの性質や情緒を反映したものであり、個別の体の形状に基づいたものではありません。

研究チームは、今回の発見が深海での進化の過程を明らかにし、未知の環境における新たな発見の可能性を示すものだとしています。

Text by 本間才子