「存在するか疑問視されていた幻の個体」 130年ぶりに目撃されたカエル 

画像はイメージ(Brocken Inaglory / Wikipedia Commons

幻の個体と言われていたチリの希少なカエル、Alsodes vittatus(Malleco Spiny-chest Frogとも)が、130年目にして目撃されました。

【画像】130年ぶりに目撃されたカエル

2025年3月の学術誌「ZooKeys」に掲載されています。

1世紀以上も目撃されていなかったカエル

南米チリを生息地とするAlsodes vittatusという小さなカエルは、たった1つの保存標本と100年前の学術的記述の黄ばんだページの中でしか、その存在を知られていませんでした。

ところが最近、チリの大学の研究者チームが人里離れたアンデスの小川に潜むこの幻の両生類の個体群を3つも突き止めたのです。

ZooKeys」に掲載された彼らの論文には、「この10年間で南米で最もエキサイティングな両生類の再発見となるかもしれない」と記されています。

ドイツ生まれの博物学者ルドルフ・アマンダス・フィリッピ氏は、1902年にチリの両生類数十種を記述。

その中に、幻のカエル、Alsodes vittatusについての記録がありました。

研究者たちはその後、、鼻から後端まで背中の長さを走る黄色っぽい縞模様を特徴としたこのカエルの生息域の調査を行いましたが、まったくその姿を見ることはできませんでした。

100年以上も目撃されないとなると、絶滅した可能性もあります。

しかし、研究者たちは諦めませんでした。

ついに2015年と2016年に科学者2人が、同じ地域でAlsodes vittatusと思われる2つの個体群を確認したのです。

ところが、彼らが発見した個体にはこの種の特徴である白または黄色の背中の縞模様がありませんでした。

これでは、本当にAlsodes vittatusの再発見かどうか疑わしく、2人は元の標本が発見された場所を正確に特定することに専念。

2023年と2024年に、ロルコ川とポルタレス川の流域で2つの個体群を再発見しました。

現在、この種のカエルは絶滅の危機に瀕しているか、研究が不十分で保護状況が不明なまま。

130年ぶりに再発見によって、この種に関する初めての生物学的・生態学的データを得ることができるため、研究者たちはさらなる調査に活かせることを期待しているということです。

Text by 都築ミロ