コンピューターのエネルギー源は生きた人間の脳細胞 新興企業が世界初の発表

画像はイメージ(Flicker/ Hey Paul Studios

オーストラリアの新興企業が、生きた人間の細胞上で動作する世界初の商用バイオロジカル・コンピューター(CL1)を発表しました。

【動画】生きた人間の脳細胞で動くコンピュータ

バイオコンピューターのエネルギー源は人間の脳細胞

発表したのは、Cortical Labs(コーティカル・ラボ)社。

CL1は、ヒト幹細胞由来のニューロンをシリコンと融合させ、「合成生物学的知性」(SBI)と呼ばれる新しいカテゴリーのAIを導入しました。

生物学的コンピュータの研究に取り組んでいる同社によると、このハイブリッド・システムは従来のシリコン・ベースのAIよりも高速に学習・適応できる一方、消費エネルギーは大幅に少ないそう。

ロイターへの取材に対し、Cortical Labsの創設者でCEOのホン・ウェンチョン博士はこのように話しています。

「私たちは採取した血液や皮膚を幹細胞に変え、幹細胞から脳細胞や神経細胞に変えます。

それらをコンピュータチップに成長させて、計算や知能に利用するのです」

この最先端のバイオコンピューティング技術は、科学・医学研究に革命をもたらすと期待されており、2025年3月2日にスペインのバルセロナで、CL1の正式発表が行われる予定されています。

発売に関しては、初期価格を約35,000ドルから(約520万円)として、2025年後半を予定しているそうです。

CL1について問題があるとすれば、人間の生きた細胞が使用されているという理由から、深刻な倫理的懸念を引き起こす可能性があること。

これに対してCortical Labsは、CL1に使用されている細胞は実験室で培養されたものだということを明らかにしています。

その一方で、道徳的および規制上の懸念に対処するためのガイドラインの必要性も認めています。

こうした問題にも、今後はさらに技術が進んでいくことでしょう。

生物学とロボット工学がスムーズに限界なく統合する時代は、そう遠くないかもしれません。

Text by 都築ミロ