「実の妹に行う様子を配信」 韓国で起きているテレグラム上での性犯罪の実態

@ch1n_n0m1さん提供画像

2020年3月、メッセージアプリ「テレグラム」を使った集団性犯罪事件「n番部屋事件」が韓国を震撼させました。

【画像】実際にテレグラムで行われている性犯罪のやり取り

この事件は、男性で構成される犯罪者集団が女性を脅して自身の裸体を撮影させ、それをテレグラムのチャットルームにて拡散し、約1万人にのぼるルームメンバーがそれを閲覧していたというものです。

残念ながら今、同じくテレグラムを使った新しい「ディープフェイク・ポルノ」に関する事件が発覚し、調査が進んでいます。

ディープフェイク・ポルノ

「ディープフェイク・ポルノ」とはAI技術を使い、ポルノ映像や画像に別人の顔をはめ込むことを指します。

韓国ではおびただしい数のディープフェイク・ポルノが生成され、テレグラム内の違法チャットルームにて拡散されています。

今回、編集部はこの事件の実態を調査するため、事件の公論化を目指す韓国のインフルエンサー2名に取材を行いました。

取材応じたバン・ソユンさん(@ch1n_n0m1)とクイーン・アーカイブさん(@Queentty)は2人とも、Xにて事件の公論化のために活動するインフルエンサーです。

「公論化」とは、事件を広く世間に知らしめるために、被害者や関係者から集めた情報を発信、拡散することを指します。

この概念は韓国では広く浸透しており、「大韓民国の犯罪処罰は、このように公論化され、人々が関心を持たないと、犯罪者の刑期が本当に低い場合が多い」とクイーン・アーカイブさんは語ります。

彼女自身は「被害者が特定の集団ではなく、どんな女性でも被害に遭う可能性があることを認識させるために、できるだけ継続して公論化を進めたい」との思いから活動をしているといいます。

クイーン・アーカイブさんは実際にチャットルームに潜入し、事件を調査しています。

テレグラムで行われている性犯罪の実態

同級生や友達等、ポルノにする対象によってチャットルームは分かれていましたが、一番多かったのは親族を対象にしたものだったといいます。

「親族を対象とした性的搾取を『家族性欲(가족능욕)』と呼び、その部屋では親族の盗撮、寝ている時の性犯罪、家族の下着を認証するなどの犯罪が起こっていました。

自分の実の妹に睡眠薬を飲ませて行う犯罪をリアルタイムで中継しているのを見ました。

下着を覗き込む映像と痴漢する映像が上がってきて、後には妹の性器に物を挿入して動画をチャットに共有していました」

このように、チャットルーム内ではディープフェイク・ポルノだけでなく、盗撮やその他性犯罪の画像・映像が多く流布しています。

特に盗撮は学校で多く行われており、特定の学校を対象としたチャットルームも存在したといいます。

一方、ディープフェイク・ポルノはテレグラムのbotを利用しているため、生成及び拡散が容易になっています。

現在、事件の発覚を受けて多くのチャットルームは削除されましたが、犯罪者たちは事件が沈静化したら戻ってくるとメッセージを残しているそうです。

目指すは事件の「口論化」

クイーン・アーカイブさんは韓国メディア朝鮮日報にて、チャットルームを見た感想を以下のように述べています。

「リング工房(リンク共有部屋)に入るとリンクがあり、そのリンクに乗るとまたリンクがあり、そのリンクに乗るとまたリンクがあり、延々と続いていた。(中略)多くの人から通報があり、DMが1分間に8件ずつ送られてきた。被害学生の話を聞き、トラウマを一緒に経験した」

また、今回のNewSphereに対する取材では日本の人々に向けて、「似たような事件が他の国でも確認されているようです。

大韓民国が一番ひどい国ですが、他の国でもいつでも似たような事件が起こる可能性があるので、警戒してください。

大韓民国の男性は外国人女性に関する部屋もすでに作って公論化されました。

男性の国籍は国ではなく、性別です」とコメントを残しました。

もう一人のインフルエンサー、バン・ソユンさんのアカウントは元々漫画のファンアカウントでした。

しかし、ディープフェイク・ポルノ事件が発覚してから、XのDM機能を通じて被害状況の情報提供を受け、掲示物を掲載して公論化しています。

そのきっかけとなったのが、母校が受けた被害でした。

「私が卒業した中学校と高校、そして在学中の大学がすべて今回の事件の被害学校として名指しされました。

このことが私と関係のない事件ではなくなったという感じを受け、今回の事件を集中的に調査することになりました。

韓国では以前にも性犯罪が頻繁に発生していました。

私は今回の事件がn番部屋事件の延長線だと見ています。

その時、まともに処罰されず、まともな制裁が加えられなかったせいで、むしろテレグラムというサイトを通じた犯罪方式がより広く広がり悪用される契機として作用したのではないかという気がします」

実際に寄せられている提供情報の内容

DM相談を受け付けているバンさんですが、2024年8月26日午前12時30分から28日朝までに受信した被害情報の提供DM数は約3000件にも上るといいます。

その一部を相談者同意の上、提供してくれました。

提供画像では、姉妹のディープフェイク・ポルノを依頼するやりとりや、女性への侮辱発言、被害者の個人情報を拡散するメッセージが確認されています。

ここで拡散されている情報やポルノは、加害者が自分の友人や家族を密かに撮影した写真、トイレに設置された隠しカメラ、また被害者のインスタグラムから素材を入手し、生成されているといいます。

「親族被害がかなり多かったです。 男兄弟が自分の兄弟姉妹を性的対象化させたことがとても多かったです」とバンさんは語ります。

また、自身の母校のように学校単位での被害も深刻だといいます。

バンさんが確認した限り、被害学校は630校以上で、被害者も加害者も同じ学校に通う未成年の生徒です。

学校専用のチャットルーム内では、生徒や教師の盗撮写真やインスタグラムに投稿された写真などを共有し、セクハラ、陵辱する発言がされているといいます。

最後に、バンさんは日本人に向けてこのようにコメントしました。

「どこも安全ではありません。でも、被害に遭わないように気をつけろと言いたくはありません。

犯罪は、被害者が何かに気をつけないために生じるものではありません。

犯罪者にならないように気をつけてください。 不健全で不健康なことに加担しないでください。

道徳的でないことに参加しないでください」

韓国メディアの中央新聞によると、政府は30日にディープフェイク・ポルノの視聴をも厳罰対象にし、ディープフェイク・ポルノの製作及び流布に対する処罰基準も5年から7年に変更するなど、犯罪を根絶させようとする姿勢を見せています。

日本でもXやdiscordにおいて女性の個人情報を流出させたり、盗撮写真を共有するコミュニティがあることから、対岸の火事だと思ってはいけません。

ひとりひとりが事件への見識を持ち、卑劣な性犯罪を許さない国際社会を作っていく必要があります。

Text by 楊文果