海外の長期滞在が与える精神面への影響 大使館の説明に「気をつけたい」

画像はイメージ(Flicker/ Philip Tellis

皆さんは海外への長期滞在にどのようなイメージを持っていますか。

語学やスキル向上のための留学といったポジティブな印象を持っている人は多いかと思います。

逆に、望まぬ海外駐在のようにネガティブな想像をする人もいるかもしれませんね。

実は、どのような動機にせよ、海外での長期滞在は精神が不安定になる原因になり得るようです。

海外の長期滞在が精神に与える影響

在英国日本国大使館の精神科顧問医を務める阿比野宏氏は、在英国日本国大使館のホームページにて「海外在住が及ぼす精神的な影響」について記述しています。

阿比野氏によると、海外在住に伴う変化は人々の心を不安定にするそうです。

そもそも、人間の心は基本的に変化を望まないもの。

なぜなら、変化は必ず何かを「失う」ことと表裏一体であるからです。

海外生活で失うものとして、阿比野氏は「言葉」「文化・習慣」「自分の周りにいる人々」「生活環境」の4つを挙げています。

これらは不満感や恐怖感、違和感を引き起こすといいます。

そしてこれらの共通点として、「普通にできていたこと、安心だと思っていたこと、安全であると感じていたことが、「無くなってしまうこと」を指摘しています。

自分の安心材料であったものが無くなってしまったり、言語や環境の違いから今まで当たり前にできていたことができなくなり「普通の状態」から「不安な状態」に変わってしまう、ということです。

人はこのような状態に陥るとストレスに過敏になり、落ち込みやすくなってしまいます。

その結果生じるのが、「『失ったもの』を感じることは、深い悲しみ、大きな痛みを伴う」「『何を失ったのか』が実感できず、『失った』という経験を認められない」「『無いもの』『いない人々』にばかり目が向いてしまい嘆き続ける」「今目の前にある、大切なものに、目を向けていくことができなくなる」という悪循環です。

更に、阿比野氏は海外在住における状況を企業からの派遣で駐在員、その家族、学生の3つのグループに分けて分析しています。

いずれの場合でも、親しい人間関係や当たり前だと思っていた会話能力等、変化により「無くなってしまったりもの」に深刻なストレスを受けていることが分かります。

また、「自分に対する過剰な期待」も気分が落ち込む大きな要因になるといいます。

阿比野氏は海外で生活することは非常に大変だということを繰り返し自分に問いかけることが大切だと文書の最後で述べています。

また、日系の医療機関や地元の医療機関等、専門家に相談することを推奨しています。

仕事や留学など、理由はどうあれ海外で長期滞在している人はいるもの。

皆さんも海外生活で不安やストレスを感じた場合は1人で抱え込まず、他者に助けを求めることを意識しましょう。

出典:在英国日本国大使館

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Text by 楊文果