カナダ版コミケ「TCAF」 人気作家や日本との違いは?

世界中で愛されている漫画やコミック。

【動画】カナダ版コミケのTCAFが開催されている様子

日本で開催されるコミック・マーケット、通称「コミケ」は世界最大級の同人誌即売会として知られています。コミケに参加するために海外から訪れる人も少なくありません。

海外でも、同様に「コミコン」と呼ばれるイベントが開催され、多くのファンが漫画やコミックへの愛を表現する場として人気です。

カナダのコミケ「TCAF」とは

2024年5月、カナダのトロントで「TCAF(トロント・コミック・アーツ・フェスティバル)」が行われ、責任者のマイルズ・ベーカーさんにイベントの概要などを伺いました。

TCAFは入場無料のファミリー向けコミックフェスティバルです。コミックの幅広さや多様性を祝い、魅力を広めることを目的に2003年からスタートしました。

「イベントの一番の特徴は、世界中から集まった約370人のアーティストがそれぞれのテーブルで自身の作品を販売する、即売会です。その他にも、ギャラリーショーやトークイベント、コミックが原作の映画上映会なども行われます」とマイルズさんは説明します。

また子供向けのワークショップを行うなど、子供たちにコミックや本を好きになるきっかけを与えられるようなイベントも用意しているそうです。

実際、会場は新しい漫画の発見を求める多くの人で賑わい、キッズエリアでも熱心にイベントに参加する子供たちを見かけました。

「TCAF」が大規模イベントになるまで

マイルズさんは「TCAFを始めた理由は、トロントには個人が作品を発表するイベントがなかったため」と振り返ります。

2003年の第1回開催には、会場となった小さな教会に約60人ほどのアーティストが参加。当時の来場者は600人ほどでした。

「2009年にトロント市立図書館と提携をしたことが大きな変化になりました。隔年開催だったのが毎年開催に変わり、来場者も約12000人に増えました」とイベントの成長をマイルズさんは話します。

また「最初は図書館の1階だけを会場として使用していました。2024年現在は3階まで会場が拡大され、今年の来場者は約30000人を見込んでいます」と続けました。

各テーブルでは、作品について尋ねる人やサインを求めるファンの姿があり、テーブルにたどり着くのに時間がかかるほどでした。

2024年は「とんがり帽子のアトリエ」の白浜鴎氏や、映画化もされた「Snowpiercer(スノーピアサー)」のイラストレーター、ジャン・マルク・ロシェット氏など多くの人気アーティストも参加。

白浜氏のサイン会は、抽選会になるほどの人気ぶりだったそうです。

日本のコミケ 海外の反応

実はマイルズさんは、日本で以前開催されていた「海外漫画フェスタ」に参加した経験があるとのこと。

マイルズさんは「イベントは1日だけで、しかも短時間の開催に驚きました。短い間に多くの準備があり、まるで短距離走のようなイベントでした。それに比べるとTCAFはマラソンのようなものです」と印象を話します。

また「日本の同人誌は完璧な装丁がされていて、どれも美しく輝いていました。これは北米の漫画家が参考にすべき点だと思います」といい、きれいに仕上がった本に感銘を受けたようでした。

海外とは異なる日本のコミック文化を体験したマイルズさん。自身も日本の漫画のファンだそうです。

「8歳の頃に、辰巳ヨシヒロ氏に出会ったのは、素晴らしいことでした」と明かしました。

マイルズさんは、もし日本でコミックイベント開催するとしたら、少し変わった作品やユニークな作品を紹介したいといいます。

また「好きな漫画家の松本大洋氏に、私のポスターを描いてほしい」といい、「TCAFを通して出会った漫画家さんを招待するでしょう」と続けました。

TCAFは毎年、The Japan Foundation Toronto(国際交流基金)の協力のもと、日本人の漫画家を招待しています。

これまでに招待された漫画家は、辰巳ヨシヒロ氏を始め、松本大洋氏や伊藤潤二氏、眉月じゅん氏など。

またイベントの開催中は、デジタルプラットフォームでもアーティストを紹介しているとのこと。

「まだまだ紹介したい風変りで興味深い作品がたくさんあります」とマイルズさんはいいます。

コミックフェスティバルは、アーティストとファンが直接つながれる貴重な場所であり、また新しいコミックの世界を開拓する場所です。

これからもコミックファンにとって重要なイベントであり続けることでしょう。

Text by 島田 そら