トランプ施政方針演説に数々の虚偽・誇張…指摘相次ぐ

Win McNamee / Pool Photo via AP

 アメリカのドナルド・トランプ大統領が3月4日に議会で行った施政方針演説には、多岐にわたる分野で虚偽や誇張が含まれていた。海外メディアによるファクトチェックの結果、特に経済状況や政府の成果について事実と異なる主張が目立った。

◆前政権での経済状況は良好
 トランプ氏は演説で「バイデン前政権から経済的大惨事とインフレの悪夢を引き継いだ」と主張したが、これは誤解を招く表現だとニューヨーク・タイムズ紙(NYT)が指摘する。実際には、トランプ氏が引き継いだ経済はほとんどの指標で良好な状態にあったという。

 同紙によると、失業率は4%程度で安定しており、これは約半世紀ぶりの低水準に近い。賃金も引き続き上昇し、2024年第4四半期のアメリカのGDPは年率2.3%で成長、2024年通年では2.5%増加した。インフレは2022年夏に約9%でピークを迎えた後、大幅に低下し、2025年1月時点で3%となっていた。

◆政府効率化部門の成果は誇張
 トランプ氏は政府効率化部門(DOGE)が「何百億ドルもの詐欺を発見した」と述べたが、NYTによれば、この主張には証拠がない。DOGE自体も、この規模の具体的な節約額は主張していない。DOGEのウェブサイトによると、2日時点での節約額は1050億ドル(約15兆円)にとどまる。

 米CNNによると、DOGE自体の公表値にも誤りがあり、実際には800万ドルの契約を80億ドルと誤って記載するなどの問題があった。

 このほか、トランプ氏は「トランスジェンダーのマウスを作るために800万ドル」が使われたと主張したが、CNNの検証では誇張と判定されている。実際には、ジェンダー肯定医療で使用される治療法の人間への影響を調査する研究に使われていた。

◆移民と国境管理に関する誤った主張
 移民政策では、トランプ氏は「バイデン政権下で2100万人の不法移民がアメリカに流入した」と述べたが、CNNによるとこの数字は事実ではない。また、前政権の任期最後の1ヶ月間で数百万人という多くの移民が国外に追放されている。

 関連して、トランプ氏は「精神病院や精神病院から解放された人々を含む」移民がアメリカに入国していると主張したが、米公共ラジオ(NPR)はこの主張に証拠がないと報じている。トランプ陣営自体も具体的な根拠を示すことができなかった。

 トランプ氏の演説にはほかにも多くの虚偽や誇張が含まれていた。NPRは、トランプ氏の「ウクライナ支援に3500億ドル(約52兆円)を費やした」という主張に証拠がないと報じており、実際の金額は約1260億ドル(約19兆円)だという。

 大胆な財政引き締めや治安対策を打ち出すトランプ政権だが、その成果は慎重に見極める必要がありそうだ。

Text by 青葉やまと