77億円のコンドームをガザに? トランプ氏主張に「虚偽」判定
ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官(28日)|Alex Brandon / AP Photo
アメリカのトランプ大統領は27日、万引きなどを犯した不法移民を拘束するレイケン・ライリー法の署名式の場で、「われわれはガザ地区へのコンドーム購入用として5000万ドル(約77億円)が送金されようとしていたのを特定し、阻止した」と発言した。トランプ政権の新任報道官の発言を繰り返したものだが、米メディアのファクトチェックでは虚偽との判定が出ている。
◆「税金の著しい浪費」と猛烈に非難したが…
AP通信(1月30日)によると、この発言の前日、ホワイトハウスで初めての記者会見に臨んだレビット報道官が同様の主張を展開。レビット報道官は「政府効率化局と行政管理予算局が、ガザ地区のコンドーム支援に5000万ドルもの納税者の税金が支出されようとしていた事実を発見した」と述べ、これを「納税者の金の著しい浪費だ」と非難した。
だが、米メディアが実施したファクトチェックによると、レビット報道官はこの主張を裏付ける証拠を何ら示していない。米CNN(1月29日)が報道官とその周囲に証拠の提示を求めたところ、あるホワイトハウス高官は、国務省の声明を参照するよう求めたという。
ところが、その国務省の声明にも、ガザ向けコンドーム支援として5000万ドルの支出が計画されていたとする記述は見当たらなかった。バイデン政権でガザ支援を担当した元高官はCNNの取材に対し、「虚偽であり、作り話だ」と断言している。
◆事実なら15億個提供の計算、「常識的にありえない」
米ワシントン・ポスト紙(1月30日)は、アメリカ政府の海外コンドーム支援の実態について詳細な検証を行った。それによると、開発途上国への支援を担うアメリカ国際開発庁は2016年から2022年までの間に、世界60ヶ国に向け、総額1億1860万ドル(約183億円)のコンドームを提供した。
このうちガザ向けとされたのが5000万ドルだが、コンドーム1個あたりの単価は約3.3セント(約5円10銭)であることから、15億個以上のコンドームに相当することになる。同紙はこれについて「常識的に見てありえない数字だ」と指摘している。
紛争地域での医療支援を行う国際医療団体IMCの広報担当者は、CNNの取材に対し、「アメリカ政府からの資金を用いてコンドームの調達や配布を行ったことは一切ない」と断言。その上で実際の支援活動については、医療の提供、手術の実施、出産支援のほか、栄養失調の検査・治療を実施していると明示した。
◆虚偽の程度は最低評価
ワシントン・ポスト紙はレビット報道官の発言について、虚偽の程度を示す同紙独自の4段階の「ピノキオ」評価で、最も深刻な「4ピノキオ」の評定を下した。同紙は報道官の初めての記者会見について「不適切なデビューとなった」と厳しい見方を示している。
同紙で政治家の発言を検証するケスラー記者は、「一般的に報道官の発言は、意図的に誤解を招くことがあるため、事実確認の対象としていない。だが、今回は(レビット報道官の)初めての記者会見での発言であり、ソーシャルメディアで急速に拡散した異例の主張だった」と、検証に踏み切った理由を述べている。
新任報道官にとって厳しい船出となった。