ハリス氏の副大統領候補は誰に? 有力視される4名

Darron Cummings / AP Photo

 6月28日の大統領選討論会で失敗したことで、メディアや一部民主党員から大統領選撤退を迫られていたバイデン米大統領は熟慮の末、21日に撤退を公表。その後、アメリカ国内の民主党支持者には驚きや怒り、絶望感、混乱が広がったものの、バイデン氏がすぐにハリス副大統領を後継候補として支持したことで一瞬にして流れが変わった。民主党と支持者は一丸となってハリス氏を支持しており、トランプ氏をはじめとする共和党陣営はその勢いに押され気味だ。そのような状況のなか、アメリカでは現在ハリス氏が誰を副大統領候補に選ぶかに注目が集まっている。

◆4年後には投票制度廃止? トランプ氏の発言
 トランプ氏がアメリカの民主制を脅かすのではと危惧されるなか、先週末の同氏の発言が物議を醸している。USAトゥデイ紙によると、27日にキリスト教系団体のイベントに出席したトランプ氏は「キリスト教徒の皆さん、どうか今回だけ投票してください。今後はしなくていいですから」「4年後には問題は解決されていますから、もう二度と投票しなくてよくなります」と発言。この発言は急速に広まり、選挙制度の廃止を示唆したなどとして、民主党を中心に批判が高まっている。

 このような背景から、ハリス氏の副大統領候補には、あらゆる面からハリス氏をサポートできる十分な政治経験と法律の知識を持ち、そのうえ支持者層を拡大して「スイングステート」と呼ばれる激戦州で勝利に導ける人物が求められている。特に、ジャマイカ系とインド系で女性のハリス氏の支持層を補完するため、白人男性となる可能性が高いと言われている。アメリカのメディアは現在、民主党員でこれらの条件を満たす上院議員や州知事数名が選択肢に挙がっていると報道している。
 
◆ペンシルバニア州知事ジョッシュ・シャピロ氏
 副大統領候補のトップと噂されるのはペンシルバニア州のジョッシュ・シャピロ州知事(51)だ。同州司法長官を務めた経験を持つシャピロ氏は、2023年に同州知事に就任したばかり。ペンシルバニア州は激戦州であり、州知事として人気の高いシャピロ氏が副大統領候補になればハリス氏にとって同州を獲得するうえでプラスになるだろう。しかし同氏はまだ州知事経験が浅いため、副大統領としてハリス氏をサポートできるかどうかが争点となりそうだ。

◆ケンタッキー州知事アンディ・ベシア氏
 南部ケンタッキー州で2期目を務めるアンディ・ベシア知事(46)は、トランプ氏支持者が多い保守的な同州において民主党知事ながら60%の支持率を誇る。若さと好感度が高いルックス、伝統を重んじる保守的な南部州の選挙で2度勝利した人気と実力は、南部・中西部などトランプ氏支持者が多い保守州においてハリス氏のイメージを高める大きな助けとなるだろう。今年11月に47歳になる同氏は副大統領を2期務めてもまだ若く、将来的な大統領候補としても有力である。

◆現職閣僚や上院議員も有力候補
 前述の州知事2人のほかにも、インディアナ州出身でバイデン政権で運輸長官を務めるピート・ブティジェッジ氏や、アリゾナ州選出のマーク・ケリー上院議員の名が有力候補として挙がっている。ブティジェッジ氏は全国的な知名度と人気が高く、バイデン政権における効率的なコミュニケーターとして保守系テレビ局FOXニュースにも積極的に出演している。

 一方、政治専門紙ヒルによると、マーク・ケリー上院議員が副大統領候補者のなかで最も好感度が高いという世論調査結果が出ている。しかしアリゾナ州は激戦州のため、同州の民主党上院議員が副大統領になり特別選挙が行われた場合は上院議席を失う可能性があるため、総合的に考えるとリスクが高いといえよう。

 8月19日に開幕する民主党大会が3週間後、大統領選が3ヶ月後に迫るなか、今後1~2週間以内には副大統領候補が決定するはずだ。ハリス氏が最終的に誰を選ぶかにより、大統領選の方向性が変わっていく可能性もある。

Text by 川島 実佳